0コンマ数秒、目を離した隙に…
ある秋の日の夜、その日はパパとお姉ちゃんはテレビに夢中だったので、私と当時2歳7カ月の息子で先にお風呂に入ることになりました。時間は夜の8時。まずは息子の全身を洗って、湯船に入れて、それから自分の洗髪を始めました。息子は湯船の中でキャッキャしながらジャンプを楽しんでいます。「滑らないようにね~」なんて声をかけながら、平和な時間が過ぎていきました。
そろそろ流そうかなと思い、「ママ、シャンプーを流すからあっちを向くよ」と声をかけ、一瞬息子から目を離した瞬間、ゴテッと鈍い音とチャポという水の音が! 慌てて目を戻すと、そこには水の中で目を開けて上を向いている息子の姿が! 「ほんの一瞬でまさか水に沈んでしまうなんて!」と一瞬パニックに。慌てて息子を引き上げるとすぐに泣き出したのでホッとしつつも、鈍い音がしていたので「痛いところはない? どこかぶつけた?」と声をかけました。
すると息子が返事をするかしないかで、水面にポタポタと血が……! 2度目のパニックに。顔を見ると顎がパックリと割れているのがはっきりとわかります。テレビを見ているパパに「すぐにきて! あと救急車呼んで!」とお風呂から叫ぶと、「なんで~?」とのんきなパパ。「息子が顎を割ったからすぐに救急車呼んで!」と怒鳴ると、慌てて飛んできたのはいいのですが、「顎を切ったくらいで大袈裟な。押さえとけば治るよ」なんて言うのでびっくり。その間にもポタポタと流れ出る血を、まずは止めなくてはと私の頭の中はフル回転していました。
#8000に電話し、整形外科へ
とりあえずパパに「きれいなハンドタオルを1枚持ってきて。そして救急車を呼んで」と再度、落ち着いた声で要請してみました。しかし「タオルで押さえておけば大丈夫だよ。ママは本当に大袈裟だ」と譲らないパパ。あまりの能天気さに衝撃を受けながら、「この割れ方はかなり深いから、縫わないといけないはず。まずは着替えさせて。私が病院へ連れていく」と伝え、タオルで顎を押さえた息子をパパに引き渡しました。
パパが頼りにならないのなら、自分でなんとかするしかないと腹をくくり、急いで泡を流し、外出の用意をしました。このときまで、私の頭は洗髪の泡がモリモリ状態でした。そして「夜間・休日に子どもの病気で困ったときの#8000(小児救急電話相談)」へ電話をし、状況を説明しました。
すると「傷が顔であること」「処置が遅れるほどきれいにくっつかないこと」「傷口からの感染が心配であること」の説明を受け、すぐにでも救急の整形外科(※)にかかったほうがよいと説明されました。そしていくつかの整形外科の連絡先を教えてくれました。
(※)切り傷の治療は整形外科のほかに一般外科や形成外科でおこなわれ、救急の場合や地域・病院によっては整形外科以外での治療となることもあります。
5針縫う大ケガに
教えてもらった整形外科に電話をすると、取り急ぎの処置はできるけれど顔の傷が残ってしまう可能性が高いと伝えられました。しかし幸運なことに、顔のケガを縫う処置に長けた同期の医師が別の病院で夜間受付をしているので、案内することができるとのこと。
紹介された病院はわが家から車で30~40分ほどでした。それでも傷が残らないほうが良いと思い、名前と連絡先を教えてもらい電話を切りました。病院へはあらかじめ電話をしていたこともあり、すんなりと診察室へ案内されました。 先生からは「今日来てよかったね。5針くらい縫いますね。処置の間、ご家族の方は外に出てください」と言われました。
麻酔なしで、細い糸で細やかに縫うと傷が残りにくいとのことでした。診察室から出ると、中から息子の絶叫が! 「痛い~! やめて~! あと何回? もうやめて~!」と聞こえるたびにお姉ちゃんがしくしく泣いています。美しいきょうだい愛を感じました。
帰り道のこと、以前からパパはケガや病気に対して鈍感なところがあり、今回も「ママは大袈裟だと思ってたけど、意外と大変なことだったんだね」なんて言い出す始末。心の中では怒り心頭だったのですが、やっと落ち着いた子どもたちの手前怒るわけにもいかず、「今後は『行かずに後悔』しないよう、とりあえず病院へ行こう。それを忘れるな!」と渋めの声で伝えるにとどめておきました。
その後、抜糸も無事に終わり、今では二重顎の跡なのか縫った痕なのかわからないくらいにきれいになりました。パパも、今ではすぐに病院へ連れて行ってくれるようになりました。親の目が離れた一瞬の隙に、子どもが大ケガをすることもあるのだとよくわかった衝撃事件でした。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修/助産師 松田玲子
著者:ゆあママ
9歳女児、6歳男児の2児の母。現在は会社員をしながら、恋愛や育児に関する記事を執筆中。「自分に甘く、子どもにも甘い」そんな自分を戒めながら日々生活しています。