子育て世代のご家庭は、お子さんや家賃や住宅ローンが家計に占める割合が大きくなるのは仕方がないにしても、余裕があれば少額でもご自身の老後費用も準備しておきたいものです。
“確定拠出年金”は2001年(平成13年)10月から始まった制度ですが、2016年(平成28年)6月末現在約600万人がこの制度を利用しています。この制度が見直され、来年の2017年(平成29年)1月から専業主婦(=第3号被保険者)の方も加入できるようになりました。この制度の簡単な内容とメリット・デメリットをお伝えします。
専業主婦でも加入できる確定拠出年金とは?
確定拠出年金は、個人で行う(=個人型)または勤務先(=企業型)が一定の掛金を積み立て、自分で預金・保険・投資信託等で運用する制度です。加入者の窓口になる金融機関を運営管理機関と言い、2016年(平成28年)6月末現在198社の証券会社・銀行・保険会社等で取り扱っています。 専業主婦は勤務先からの掛金は出ませんので、個人型の制度に加入します。掛金は毎月5,000円以上1,000円単位で設定でき、上限月額は23,000円です(自営業者や会社員等の上限とは異なります)。
確定拠出年金”のメリット・デメリットは?
確定拠出年金は、国民年金・厚生年金の制度に自分で上乗せする制度ですので、良くも悪くも自分でお金を出し管理します。国民年金・厚生年金は国民全体の総額で管理され、現在払っている年金保険料は将来の自分のためでなく、現在年金を受け取っている高齢者への年金の支払いに使われますが、この確定拠出年金は自分でかけた金額は、将来の自分のためのものになります。
しかし、国民年金・厚生年金の制度を基準としている面もあるため、亡くなるか障害状態にならない限りは、確定拠出年金で貯めたお金は60歳まで下ろすことはできません。これは、国民年金・厚生年金もお金に困っているからと言って60歳より若い時期に支給できないと同じ考え方です。
60歳まで積み立てたお金を手元にできない代わりに、運用や利息に掛かる税金は非課税となり、掛金は所得控除(=所得税・住民税の軽減)の適用となるなどのメリットもあります。
また、その他の主なポイントは、以下を参考にしてください。
(1)年間3000円~8000円程度の事務手数料・管理手数料がかかる
(2)所得税・住民税の支払いがないと所得控除のメリットは受けられない(年収103万円以下)
(3)自分名義での年金が増額できる(離婚時に分割できない)
(4)運用の状況次第で掛金よりも多く受け取れることがある一方、元本割れすることもある
確定拠出年金は多くの金融機関で取り扱いがあるのにもかかわらず、パンフレットやホームページで目にする機会は多くないと思います。これは金融機関で利益が出ず、内容も説明しにくいからとも想像できますが、効率的に老後資金を貯める仕組みとしては税金の優遇も大きく検討に値する制度です。月5000円から始めることができるので、興味のある方は情報を集めてみましょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。