答えてくれたのは……
三鷹レディースクリニック院長 天神尚子(てんじんひさこ)先生
日本医科大学産婦人科入局後、派遣病院を経て、米国ローレンスリバモア国立研究所留学。その後、日本医科大学付属病院講師となり、1995年5月から三楽病院勤務。日本医科大学付属病院客員講師、三楽病院産婦人科科長を務めた後、退職。2004年2月2日より、三鷹レディースクリニックを開業。
そもそも不正出血ってどんなもの?
まずは生理の定義をおさらいしましょう。女性の体では、ある周期で、卵巣から「エストロゲン」と「プロゲステロン」という2種類の女性ホルモンがリズミカルに分泌されることによって、子宮内膜が厚くなり、妊娠に備えます。しかし、受精卵が着床しないと、子宮内膜がはがれて、出血とともに体外に排出されます。これが生理です。
不正出血とは、この生理以外の出血のすべてをいいます。ただし、妊娠中はまた別です。
不正出血と生理って何が違う? 見分ける方法は?
不正出血と生理の違いは大きく分けて3つあります。
1)不正出血は生理ほど出血量が多くない
2)生理は色が鮮血、不正出血は茶色っぽいことが多い
3)生理は数日続くが、不正出血はすぐ止まったり、長く続くこともある
ただ、自分で不正出血なのか生理なのかを判断することはとても難しいです。大切なことはたとえ出血が少量であれ、茶色っぽい出血だとしても、出血しないはずの時期の出血はやはり「何かおかしい」と疑ってみることです。
また、生理周期が不順の方は不正出血に気づくことが難しいかもしれません。生理周期と不正出血が重なることもあり、迷うことが多いからです。そんな場合も、とにかく「あれ?いつもの生理とちょっと違うかな?」と思ったら、自己判断はしないこと。病気のサインである恐れもあるので、迷わず婦人科を受診して、どこから出血しているのか明確にしてもらいましょう。
疑われる病気は?心配のない不正出血もある?受診の目安は?
心配のない不正出血は、はっきり言ってありません。不正出血の原因を自己判断することは難しいのです。そのため、不正出血は決してほったらかしにしないでください。
すぐに受診してほしい症状
不正出血をした場合は、どんな場合でも受診をするのが望ましいですが、この3つに当てはまる場合は、特にすぐに受診をしてください。
1)たびたび不正出血が続く
2)出血(生理も含む)が2週間以上止まらない
3)おなかが痛い
不正出血で疑われる病気
不正出血でもっとも注意しなくてはいけないのが、子宮がんです。がんのできる場所によって、子宮頚がんと子宮体がんの2種類があります。
●子宮頸がん
子宮の頸部にできるがんです。早期発見すれば治すことができ、子宮を残して妊娠も可能です。症状としては不正出血、性交時の出血が多いです。初体験の年齢が若くなってきた近年は、20~30歳代でも増えており、子宮頸がん検診の対象は20歳以上の女性となっているほどです。検診では細胞の悪性の有無をチェックする細胞診と超音波検査を両方おこなうのが望ましいです(自治体によっては、検診項目に超音波検査が含まれていないことが多いです)。超音波検査によって、卵巣腫瘍や子宮の病気を発見できることもあります。
●子宮体がん
子宮の内膜にできるがんです。50~60歳代に多く見られ、最近、増加傾向にあります。症状は不正出血で、とくに閉経後の出血は注意が必要です。肥満、糖尿病、高血圧の方はとくにリスクが高い傾向があり、要注意です。
●子宮頚管ポリープ
子宮の入口付近から突出して見られる有茎性に発育したポリープでほとんどのものが良性腫瘍です。無症状なものが多く、検診時に偶然発見されることが多いです。不正出血や性交時出血が症状として出ることもあります。
●子宮膣部びらん
ホルモンの影響で、子宮の入り口が赤く見えるのが子宮膣部びらんです。びらんはデリケートなので、炎症をおこしやすく、少しただれた状態になったりすると、少量出血します。子宮腟部びらんは治療の必要がない場合が多く、経過観察になることも多いです。
病気以外の理由で起こる不正出血
病気ではないのに、ストレスが原因で卵巣機能のホルモンのバランスが崩れて、不正出血することがあります。これを機能性出血いい、無排卵のときや、ホルモンバランスがまだ不安定な思春期にも起こることがあります
そのほか、低用量ピルを飲んでいるときに、副作用として不正出血をおこすことがあります。
「不正出血をほったらかしにしないで」と天神先生は強くいいます。先生のメッセージは「婦人科はあなたの味方です。とくに若い方は、婦人科の受診に抵抗があるかもしれません。でも、あなたのための診察なので、安心して受診してください。正しい知識を得たり、不正出血の不安を解消したりするだけでもストレスが減ります。受診する価値は必ずありますよ」と続きました。
「婦人科の受診はハードルが高い」と思っている人は多いと思います。でも、怖い病気が隠れていることがあるからこそ、不正出血は見過ごしてはいけないんですね。
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取材・文/山本通子