
毎週の報告会
私の友だちも夫の友だちもお酒好きが多く、結婚当初はそれぞれが毎週のように「結婚祝い」と称された飲み会に参加していました。結婚祝いですから当然相手の話題が出るわけで、どんなことを聞かれたか、どんなことを答えたかを帰って来てから報告し合うのが週末の楽しみになっていました。そんなある日のこと、夫がふと私に質問してきました。
「俺のこと、何がきっかけで好きになったの?」。どうやら今回はその話題が出たようです。
私が夫を好きになったきっかけはいろいろありますが、決定的なきっかけは誠実な人だとわかったとき。もともとダメ男にばかり引っかかっていた私は、きちんと連絡のやり取りができ、ありがとうやごめんねが言える誠実な彼に惹かれました。
恥ずかしかったものの私はその思いを夫に伝え、今度は夫が私を好きになったきっかけを質問しました。
めぐりめぐる期待
思えば、何がきっかけで私のことを好きになったのかや、どこが好きかなんて聞いたことがありませんでした。私からは、誕生日や記念日があるごとにそういった内容の手紙を渡していたのですが、夫は手紙を書く習慣もなければ、言ってくることもなかったので、どんな答えが返ってくるのかすごく楽しみでした。
夫が答えるまでのほんの数秒の間、私の頭のなかには期待のワードが飛び交います。「オシャレ?」「おもしろい?」「一緒にいて楽しい?」「笑顔?」「やさしい?」
このときの私は少しニヤけていたに違いありません。しかし、返ってきた言葉は、あまりに意外なものでした。
夫が私を好きになったきっかけとは
「俺がずんこを好きになったきっかけはね、図書館で本を借りてきてくれたことだよ」
返ってきた答えの意外さと、自分に対する間違った期待への恥ずかしさでしばらくしゃべることができませんでした。同時に、そのころの思い出が頭のなかに蘇りました。
それは大学卒業後のこと。ひょんなことから山登りに行くことになった私たちは、近くのショッピングセンターのフードコートで、どの山に行くか、作戦会議を開くことになりました。本来スマホで調べれば山の情報は出てくるのですが、それではうまく決まらなそうだと思った私は、近くの図書館で関東の山の本を借りてきました。
彼は、私の古風な一面を知り、かわいいと思えたんだそうです。私としては特別なことをしたつもりではなかったので、「なんだ、そんなきっかけか」と少し落胆しました。でも、夫がその思い出を大切にしてくれていて、ほかの人にも話してくれていることを知りうれしくもありました。
その後も楽しい報告会を重ね、私たちの「結婚祝い」な週末は幕を下ろしていきました。
夫が私を好きになったきっかけは、とても意外なものでした。人に自慢できるようなきっかけではなかったけれど、当時の夫の思いを知ることができて、心が温かくなりました。結婚すると、意外な事実がふと判明してとてもおもしろいです。これからも昔を振り返ったり、未来の話をしたりしながら、お互いのことをさらに深く知り合い、仲良く暮らしていきたいです。
原案・文/ずんこ
作画/ちゃこ
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