結婚しても実家近くに住みたいと思っていた
私の地元は関西で、実家が大好きです。進学も就職も一番の条件は家から通えること。当然のように結婚をしても実家の近くに住みたいと思っていました。会社員になって、飲み会で知り合った彼とお付き合いがスタート。やさしく穏やかな彼と過ごす時間は幸せで、次第にこの人と結婚できるといいな、と思うようになりました。
そんなある日、彼から「関東に転勤になった、ついてきてほしいと思っている」と告げられました。突然の言葉に、これってプロポーズ? 遠くに引っ越すの? 家族や友だちと会えなくなる? と一瞬でいろいろなことが頭の中を駆け巡りました。
パニックになる私を見て、彼は「今まで実家暮らしだったし不安だよね。お母さんや友だちと相談してゆっくり決めてくれたらいいからね」と言ってくれました。その言葉を聞いて、私のなかの不安が軽くなり、私は彼についていく決心をしました。
私の不安に寄り添ってくれる彼となら、たとえ寂しい思いをしても乗り越えていける、とその一瞬で確信したのです。
悲しむ私に、夫がとった行動は…
彼と結婚し、引っ越し当日。「乗り越えていける」と思っていたのに、何もない新居で母が持たせてくれたおにぎりを食べていると自然と涙が溢れ、うれしいはずの結婚生活は涙のスタートとなりました。
翌日、引越しの片付けに追われるなか、気持ちが沈んでいる私に気付いた彼が「浅草に行こう」と外へ誘い出してくれました。これが良い気分転換に。彼のやさしい心づかいに触れたことで前向きな気持ちになれました。
週末は観光に出かけ新しいお店を開拓したり、彼の会社の同期を家に招いたり。今思えば、不慣れな土地で私が少しでも楽しく過ごせるようにと、彼が配慮してくれていたのだと思います。それから連休には実家に帰省でき、その後も友人の結婚式に参加するために私ひとりで帰省することが続きました。「帰ろうと思えば帰れる! 会いたい人にも会える!」と少しずつ不安も消えていきました。
それから、妊娠し出産をしました。子どもが生まれると、公園、習いごと、幼稚園とどんどん人間関係が広がり、今では寂しさを感じることはなくなりました。両親とはテレビ電話をしたり、子どもたちと手作りしたプレゼントを贈ったり、一緒に住んでいたころよりも両親を想う気持ちが深くなった気がします。今は、両親に対して「離れていて寂しい」ではなく「何かあったらすぐに駆けつけるよ」と伝えられるようになりました。
暮らしながら好きになっていく
結婚する前は実家から離れるなんて考えられなかった私でしたが、暮らしているうちにこの土地がどんどん好きになっていきました。自転車で行ける範囲にたくさんの大きな公園があり、行きつけのパン屋さんができ、世間話ができるご近所さんとも出会えました。引っ越してきた当初は、不安でいっぱいだったのに加え、近所の散歩さえも地図がないと道に迷うほどでした。
でも今は、帰省を終えて自宅の最寄り駅に着くと「帰ってきたー!」とホッとするくらい、ここが私たちの居場所になっています。
まとめ
大切なことは、どこに住むかよりも「この人となら頑張れる」かだと実感しています。彼は、私が楽しく過ごせるようにと外へ連れ出し、度重なる帰省も快く送り出してくれました。引っ越してすぐのころ、自分も新しい職場で不安だったはずなのに、やさしく気づかってくれた彼には本当に感謝しています。
「彼と一緒に暮らす場所ならどこだって好きになれるよ!」と、あのとき悩んでいた自分に教えてあげたいです。
著者/大岡むぎ
作画/今井美保
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