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「誰か、話を聞いて…」コロナ禍で増す孤立感にママたちがSOS!【孤育て支援の現場から】

誰も悩みを聞いてくれない――。ただでさえ子育て中の母親は孤立感に陥りやすいもの。その状況にさらなる追い討ちをかけるのがコロナ禍です。今、孤立感に悩む母親たちは、どんなことに困り、どんな支援を求めているのでしょうか。行政や支援団体に寄せれる現場の声とは。「孤育て」のSOSを取材しました。

「誰か、話を聞いて…」コロナ禍で増す孤立感にママたちがSOS!【孤育て支援の現場から/前編】

 

「とにかく話を聞いてほしい」 相談者から伝わる孤立の闇

「毎日ワンオペで孤独なんです。仕事と家事と育児で疲れ切ってしまって……。夫は育児の話を聞いてくれません」
受話器の向こうの女性は沈んだ声で語った。

 

「とにかく話を聞いてほしい」 相談者から伝わる孤立の闇

 

子育て世帯が多い世田谷区では、夜間と休日に子育てに関する電話相談を受け付けている。相談員は臨床心理士などの有資格者たち。2021年度は881件の相談が寄せられ、そのほとんどが母親からだった。

 


「せたがや子育てテレフォン」

電話番号 03-5451-1211(専用電話)
対象は世田谷区在住の18歳未満の子ども、妊婦、子育て中の保護者ら
利用時間は平日夜間(17〜22時)と土日祝日(9〜22時)※年末年始除く


 

前述の女性は、ワンオペ育児の大変さと、メンタルを支えてくれない夫への不満を切々と話した。相談員が丁寧に話を聞き、労いの言葉をかけるうちに女性の声は明るくなっていったという。
 

「またいつでもご利用くださいね」
相談員のやさしい声掛けに、女性は幾度も礼を述べ電話を切った。

 

この相談窓口では約60%が助言により終了している。
「孤立感に悩む人は電話で話すだけで気持ちがラクになるという人が多いです。聞いてもらってアドバイスを受けることで、納得して通話を終える方が多い。このテレフォンは直接的なサービスを提供するといったものではありませんが、話を聞いてもらうだけで育児に対する負担感・不安感の軽減につながっていることがわかりますし、ちょっとした不満に対しても相談者に寄り添って話を聞くことの大切さを実感しています」と担当職員は話す。

 

“ちょっとした不満”が吐き出せないもどかしさ

子育て中は楽しいことばかりではない。誰かに吐き出したい不満もある。でもその大半は“ちょっとしたこと”なのかもしれない。ママ友や実家に聞いてもらうだけで溜飲が下がることも多い。しかし、それが誰にも言えずに鬱積すると孤独や苛立ちを覚えるようになる。

 

「子どもがチョコレートばかり食べる」
「ワクチンで痛い腕に子どもが乗っかってくる」

 

相談窓口に寄せられた悩みは、一見ささいなことのようだが、内実はどれも深刻だ。電話で相談するほど誰かに聞いてもらえない状況が続いているという証拠なのだ。

 

世田谷区の地域特性として、「身近に頼れる親族がいない」という相談も多い。母親が一人で育児を担っている場合、こうした状況も孤立感を増幅させる。

 

「実家が遠くて両親や友達とすぐに会えないんです。夫は夜の仕事なので昼間は寝ていることが多くて。夫とはけんかになってしまうことが増えて、子どもには申し訳ないと思っています」

 

乳幼児を抱えるある母親はこう話し、「子育ての自信がなくなってしまった」と打ち明けた。相談員に胸の内を吐露するうち、落ち着きを取り戻したという。

 

ソーシャルディスタンスがママ友づくりの壁に

「コロナ禍に入ってから、なかなか実家の応援が得られない人が増えています。お母さんたちの人恋しさが増した気がしています」と語るのは無償の訪問支援を続けるNPO法人ホームスタート・ジャパン事務局長の山田幸恵さんだ。ソーシャルディスタンスが浸透し、ママ友作りにも支障が出ているそうだ。

 

ソーシャルディスタンスがママ友づくりの壁に

 

「妊婦さんは産科で友だちができることが多いですが、コロナ禍の現在、待合室では隣と距離を空けて座らなければいけない状況です。公園で初めて会う人には『声を掛けてはいけないような気がする』と感じるお母さんもいます。子育て広場も人数制限した時間制になっていると、気軽に話しかけづらいと感じるようです」(山田さん)

 

ボランティアが寄り添う訪問支援。孤立感の解消に

ボランティアが寄り添う訪問支援。孤立感の解消に

 

ホームスタートでは、妊婦や子育て中の親の訪問支援を続けている。現在、全国113団体がネットワークに参加。現在、全国115地域で取り組まれている。研修を受けた地域のボランティアが訪問するので利用料金はかからない。最も多い支援のニーズは「孤立感の解消」だという。

 


NPO法人ホームスタート・ジャパン

対象は妊婦、乳幼児(未就学児)がいる家庭


 

シッターやヘルパーとは違うので、育児家事そのものは担わない。一緒に洗濯や料理をしながらおしゃべりしたり、上の子も連れて一緒に公園や子育て広場へ行ったりすることもある。言わば“近所のおばちゃん”的な存在だ。

 

「このゆるさがボランティアならではの良さだと思っています。お母さんたちを批判しない、否定しない、ありのままを受け止める、ということを大切にしていますので、話すことで気持ちが整理でき、ラクになるようです。それがお母さんの自信や意欲の回復につながっていくことが多いですね」
 

 

私を応援してくれる人がいる。そう感じるだけで孤立感はやわらぐ。コロナ禍でも母親たちを支える支援は続いている。「孤育て」に陥る前に、気負わず甘える勇気も大切なのかもしれない。

 

取材協力/世田谷区、NPO法人ホームスタート・ジャパン

 

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    著者プロファイル

    ライター大楽眞衣子

    社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

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