転校早々、教室へ行けなくなった長男
長男は、もともと目立つのが苦手なタイプ。小学校転校当日は私も一緒に登校しました。緊張していないか、心配だったのです。一度もふり返らずに、まっすぐ教室へ向かう姿を見て、強くなったのだと安心しました。
数日後、先生から電話がありました。長男が登校中に気持ち悪くなってしまい、1日保健室で勉強していたという内容でした。帰ってきた長男に、事情を聞きます。
「みんなが休み時間のたびにワッと寄ってきて、一度に質問される。ちゃんと答えられたか心配。」
「授業中に歩き回る子もいて、前の学校と全然違ってびっくりしている」
こんなことを言っていました。
その日のうちに、再度先生から電話がありました。クラスメートからの申告により、長男の帽子を上級生が盗ってからかっていたことが発覚。長男は転校したばかりで相手がだれかわからず、話せなかったと言います。いろいろなことがありすぎて、疲れてしまったのでしょう。次の日は学校を休みました。
登校中に吐き気。昇降口まで見送る日々
長男は学校へ行きたいと言います。ただ、1歩1歩学校に近づくにつれて、吐き気がしてくるそうです。一緒に登校するほど仲が良い、同じ方面の友だちもまだいません。
ここで、新米パパの登場です。
いつもより数十分早く家を出て、車で長男を学校まで送り、昇降口に入るところを見てから仕事へ向かう日々が始まりました。歩きながら2人でなにを話しているのか聞いても、男同士の話だからと教えてくれません。
昇降口から入ったあとは、まっすぐ教室へ行ける日もあれば、朝から保健室へ向かう日、途中から保健室へ行く日とさまざまでした。新米パパは怒ることも、頑張れとも言わずに毎日「今日も頑張ったな」とだけ伝えていました。
ついにひとりで登校できるように
新米パパとの車での登校は、1カ月近く続きました。徐々に保健室へ行かなくなり、「ひとりで歩いて行く」と言いだし、一緒に学校へ行く友だちを見つけてきました。もう吐き気がするとは言いません。具合が悪くても一度も学校を休まなかった長男と、根気強く車で送り続けた新米パパの努力が実ったのです。
後日、長男と新米パパは交通機関を使って2人でお出かけしました。後から聞いたところ、「毎日教室に行けるようになったら、野球観戦に行こう」と約束していたそうです。スマホで送られてきた、観戦をノリノリで楽しむ長男の動画を見て、新米パパがいてよかったなと思いました。
小さいときから自分の気持ちを我慢してため込み、吐いたり発熱したりする長男。転校により緊張するとは思っていましたが、教室に入れなくなるとは思ってもいませんでした。そんな長男のことを理解して、叱らずに支えた新米パパ。長男からみた父としての株も、グッと上がったようです。血の繋がりはありませんが、これからも親子として関係を築けるよう2人を見守っていきたいと思います。
ベビーカレンダーは、多様化している家族のあり方=“新しい家族のカタチ”について発信する取り組みを開始しました。当事者のリアルな声をご紹介していきます。多様な幸せを実現できる社会、そして、もっと「家族を持ちたい」「赤ちゃんを産みたい」と思う人が増える世の中づくりの一助となりますように。
著者:樋口 みき
13歳と1歳の女の子、10歳の男の子を育てる母。離婚、婚活を経験し、ステップファミリーとして生活。年の差兄弟の生活スタイルの違いに翻弄されつつ、パワフルに生きています。