「いまは自分の体調を最優先してね」という店長のやさしい言葉に安堵したものの、仕事仲間たちからは、同僚の妊娠を喜ぶどころか誹謗されてしまった。
「妊娠するのって、そんなに言われなきゃいけないことなんですか? 私はいま妊娠したことに後悔はありません!」
面と向かって自分の気持ちを伝えたけれど、陰口を言われながらの仕事に、ストレスを抱えてゆく……。
「僕と帰ってこない妻」第169話
自分への非難に心を痛め、小さくしゃがみ込み、涙を流した妻……。
そんな妻のつらさをつゆ知らず、帰宅した夫は、仕事の不平不満を妻に愚痴った。
「それに比べて、雪穂のところは良いよな。結果出してれば、文句も言われないだろ?」
違う。そうじゃない。
本当は陰で文句ばかり言われている……
つらくて悲しい胸の内を伝えられず、一人で抱え込んでいた。