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【感染症File】おっぱいがあげられない!?「HTLV-1」って何?

HTLV-1は、成人T細胞白血病などの原因となるウイルスです。母乳感染がほとんどを占めています。感染していた場合、出産後の栄養方法について医師から説明があると思います。直接母乳を与える、ミルクに切り替える、冷凍母乳を与える、それぞれメリット・デメリットがあります。きちんと説明を聞いて、ママ本人が納得できる方法を選択できるといいですね。

 

こんにちは!助産師のREIKOです。これまでいろいろな感染症についてお話してきました。ママの産道を赤ちゃんが通ってくることで感染してしまう「産道感染」を起こす病原菌のお話が多かったと思います。今回は、ママの母乳を介して感染してしまうウイルス「HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)」についてお話ししたいと思います。

 

HTLV-1(成人T細胞白血病ウイルス)って?

HTLV-1は、成人T細胞白血病(ATL:白血病やリンパ腫として発症する血液の悪性腫瘍)、HTLV-1関連脊髄症(HAM:歩行障害や排尿排便障害を特徴とする神経疾患)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU:両目に発症する疾患)などの病気の原因となるウイルスです。

 

「白血病」なんて聞いてしまうと、「え!?白血病ってあの!?」と動揺してしまいますよね。しかし、これらの病気は、個人差はあれど感染してすぐに発症することは少なく、長い時間をかけて発症するのが特徴です。

 

どうして感染するの?

HTLV-1に感染してしまう原因はさまざまです。約40%が性行為や輸血、約60%が母乳や胎盤、産道を通って来るときの感染です。なかでも、母乳感染が感染経路のほとんどを占めています。

 

そして不思議なことに、HTLV-1のキャリアの数は九州・沖縄地域に多いという特徴があります。しかし近年では、日本中を自由に行き来が可能になってきていることもあってか、九州・沖縄地域のキャリアの数は減少してきていて、関東地域のキャリアの数が増加してきているという傾向がみられます。

 

感染していた場合の母乳の取り扱い

HTLV-1に感染しているかどうかは、妊婦健診の初期の血液検査で確認しています。もし、HTLV-1に感染していた場合、出産後の栄養方法をどうするかについて医師から説明があると思います。

 

母乳を介してHTLV-1に感染するとはいえ、母乳栄養を続けた場合でも母子感染をおこすのは15~20%といわれています。しかし、これをミルクに代えることで感染率を約1/6に減少させることができるといわれています。

 

また、感染していても母乳を与える期間が3カ月以内の短期であれば、ミルクに代えることで減少する感染率と変わらないという報告もありますが、症例数が少ないため、明確な根拠を示すまでに至っていないのが現状です。そのほかに、搾った母乳をいったん冷凍し、それを解凍して赤ちゃんに飲ませるという方法もあります。これは、冷凍すると母乳のなかのウイルスが不活性化するためです。

 

 

直接母乳を与える方法、ミルクに切り替える方法、冷凍母乳を与える方法、それぞれメリット・デメリットがあります。きちんと説明を聞いて、ママ本人が納得できる方法を選択できるといいですね。


著者:助産師 REIKO

医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。

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