「いかにお得か」でビュッフェをまわる夫
そもそも、計算好きの夫はこまめに家計簿を付けるタイプ。数字に弱くおおざっぱな私にとってはありがたい存在なのですが、その細かさがビュッフェ中にも発揮するのです。
おいしそうなもの、食べたいものを食べるのではなく、なるべく材料費の高そうなものをできるだけ多く食べる、という「いかにお得か」視点でビュッフェをまわる夫。私はそれを見て、最初は「ケチくさいなぁ」とモヤモヤした気持ちを抱いていました。
加えて、限界までおなかにつめこむように食べるのも疑問でした。帰り道ではいつも苦しそうにしている夫に、「本当に食事を楽しめているのかな」と思ってしまうのです。
忘れられない結婚記念日
婚姻届を提出した日、初めての結婚記念日となるその日に、私たちは飲み放題のお店に行きました。普段は気軽に足を運べないような割高のお酒がそろう、値段もそれなりに高く設定されたお店で、夫婦となった記念すべき日を祝おうと思ったのです。
慣れないビッグイベントに緊張していた私たちは、あおるようにグビグビとお酒を呑み始めました。そのとき、夫の「元を取りたい」スイッチもONになってしまったのです。
慣れないシャンパンや高級ウイスキーのおいしさに酔いもすすみ、もともとお酒に強くない夫の頬はみるみるうちに赤らんでいきました。そして小一時間ほどすると、おしゃれなお店のテーブルに突っ伏して眠ってしまったのです!
時にはあきらめることも必要
眠りこけた夫を必死に抱え、たいへんな思いをしてタクシーに乗せた記憶は忘れがたく、おかげで初めての結婚記念日は強烈な思い出になりました。そして私は、「今後は絶対に夫を飲み放題のお店に連れていかない!」と胸の内で固く誓ったのでした。
しかし、ビュッフェは夫婦共通の趣味であり、これからも行き続けたいと考えていました。とはいえ、以前からビュッフェでの夫の楽しみ方には疑問を抱いていた私。そこで、「元を取ろうという気持ちにとらわれすぎずに、おいしい料理を楽しめば?」「歩けないほど苦しくなるまで食べるのはやめたら?」と夫に提案し続けたのですが……。その後も、夫の行動は変わりませんでした。
きっと夫の性分は変えられないし、苦しそうにしていても毎度ビュッフェに行きたがるのだから、本人としては楽しんでいるのだろうと、次第に私はあきらめムードに。結局、各々のペースで好きに楽しむのがいいか、という結論に至りました。
他人を変えようとしても無駄で、ならば自分が折り合いをつける必要がある。夫婦間にとどまらず、人生における人間関係の教訓を、私は一連のビュッフェ問題で学びました。
ふたりともそろそろ中年ですし、健康を考えて食べ放題は年に1、2度くらいにしようと思っています。もちろん、飲み放題は禁止です。
著者/つちやです
イラスト/おみき
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