被災してもなお「大丈夫だから」と言う妻の言葉を聞き、夫は「このまま何もしないなんて絶対ダメだ。俺も雪穂と結のところへ行こう!」と決意。
避難生活で必要な物を調べて買い出しをしたあと、義実家近くにある叔父さんの家に避難させてもらう約束を取り付けた。
そして、被災地へ向かうためにレンタカーを借りようと手続きをしているところに、慌てた様子の男がお店に入ってきて、最後の一台を譲ってくれないかと交渉してきた。
「無理なお願いだとわかっています! でも、妊娠中の妻が被災してしまったんです!」
彼が急ぐ理由は「妻を早く迎えに行って、安全な所に連れていってあげたい」という自分と同じ理由だと知り、「一緒に家族を迎えにいきましょう!」と、一緒に被災地へ向かうことにした。
「妊娠中に無理する妻を休ませたい」
同乗した男性は、身の上話を語り始めた。
「僕の妻、ちょうどつわりがピークの時期みたいで、仕事も休職したんですが、家のことだけはやろうと無理をしがちで、実家に帰らせたところだったんです」
「僕も昔、被災したことがあるんですが、避難所は空気も悪いし、プライバシーもない……妊娠中の妻の気持ちを考えたら、いてもたってもいられませんでした」
妊娠してつわりで体調が悪く休職。それでも、せめて家のことくらいはやろうと無理をしてしまうから、つわりが落ち着くまで実家に帰ってもらっていた矢先の出来事だったという。
不測の事態に戸惑っているのは、みんな同じ。でも、彼の妻が実家に帰った理由は「妻へのやさしさ」だった。
それに反して、自分は妊娠中の妻にひどいことばかり……夫はますます後悔の念に苛まれる。
ちなきちさんの最新投稿は、SNSやブログから更新されています。ぜひチェックしてみてくださいね。