「行って確かめてきますから、慌てないでください……きっと間違いですよ」そう言って電話を切ったM美さん。
事故だなんて絶対嘘だと思いながらも、娘ちゃんの絵をお守りとしてカバンに入れ、T男さんが搬送された病院へ向かいました。
通常の診療時間が終わり、チャイムで来院を知らせるM美さんでしたが……?
「助かりますよね?」ふらつきながら質問すると…
※個人特定を防ぐため、怪我の詳細は伏せております。
「私は家族で……妻なんです!」
M美さんがそう告げると、
「少々お待ちください。……あぁ、T男さんですね。はい、〇〇市から搬送されて現在緊急手術中です」
「き、緊急手術……! 本当だったの!? まさか……パパがどうして……!」
慌てふためくM美さん……。
「担当者が参りますので、ご家族は専用ロビーでお待ちください」
「待って! 手術ってかなりひどいんですか!? 夫はどういう状態なんですか!?」
「すみません。受付では詳しいことがわかりかねますので、院内でお待ちください」
「病院の中で…!」
一瞬たじろぐM美さんでしたが……
「私が怯んでいる場合じゃない!」
震えながら病院のなかへ足を踏み入れました。
過去のトラウマから苦しくなり、呼吸が荒くなるM美さん。
M美さんがロビーへ進むと、病院スタッフから声をかけられました。
「すみません、T男さんのご家族でしょうか!? 恐れ入りますが、こちらの書類に記入していただけますか?」
「あっ! 大丈夫ですか? 気分が悪い!?」
「いえ……大丈夫です。ちょっと病院の匂いとか雰囲気が怖くて……」
「それよりパパは……夫は大丈夫なんでしょうか!? 手術って……どういう状態なんですか!?」
自分のことより、パパの容体を心配するM美さん。
「怪我の状態ですが、まず両足の開放骨折、それに膀胱が破裂しています。頭部にも裂傷があり、出血がひどい状態で……」
「ひっ……何でそんなことに! 夫は助かりますよね? 死んだりしませんよね?」
「詳しい説明は手術後に執刀医からありますので、今はお待ちください。何かあったらインターホンで呼んでください」
「……はい分りました」
「私のせいだ……私がこんなだから事故が起こった……私なんかのせいでパパにもしものことがあったら……」
自分を責める M美さんですが……?
頑なに病院を拒否してきましたが、ついに勇気を出して病院のなかへ入りました。息が荒くなるほど苦しいのに、パパの心配をするM美さん。しかし、手術が終わらないと病院スタッフも確かなことが言えないため、「助かりますよ」「大丈夫ですよ」という返事がもらえません……。パパの事故を「私のせいで……」と自分を責めるM美さん。以前娘ちゃんが間一髪で事故を回避できた際、「もし事故に遭っていたらスマホが触れなくなるところだった」と異常な思考回路になっていましたが、今はスマホを気にする様子がありません。もしかしたら普通の感覚に戻ってきているのかもしれませんね。