病院の特徴である母親学級が対面で出来ないという危機感から始まった
<お話を伺った方 医療法人愛和会 愛和病院 広報・企画課 内田 卓也さん>
編集部:オンラインにされたきっかけを教えてください。
内田さん:2020年6月にスタートしたオンラインクラスはいわゆる母親学級のことです。
患者さまに対面で行う母親学級は、当院の特徴の一つと言えるほど力をいれていました。そんな中、コロナが広がって対面で出来なくなった。そこで、担当していた助産師を中心にオンラインでやろうという声があがりました。
編集部:現在は、妊婦さま以外に向けた内容もあるようですが、どのように進めていったのですか?
内田さん すべてスタッフが自主的に作っていきました。
現在、1ヶ月にクラスは13種18コマ行っていますが、内容はすべてスタッフが決めました。ちょうどオンライン化するにあたり小児科や婦人科領域、さらに美容系の内容も充実させたことで、産後も患者さまと繋がりを持てるようになりました。
当然、新しい領域のクラスは、コンテンツも講師もゼロからスタートでしたので、当初は本当に大変だったと思います。今では、患者さまにアンケートで満足度をお伺いし、ブラッシュアップを図っています。
リーダーも運用もスタッフ主導にすることが成功の秘訣
編集部:ライブ配信が中心のようですが、ご苦労はないですか?
内田さま:ライブ配信では、Zoomのウェビナー(講演や講義式の一般的なオンライン配信のこと)形式で行っているためどうしても一方的になりがちです。
それでも少しでも対面の時の良さを伝えるため、とにかく最初の5分のつかみを大事にしようとがんばりました。
自己紹介を工夫したり、挨拶をとにかく元気にするなど、それぞれの担当者が知恵を絞って工夫しています。その後は、スライド資料等を見せながらお話をしています。
最初に妊娠出産のためのガイドになる「愛和ストーリーブック」をお渡ししていますので、それをテキストにしているものもあります。
みなさんスマホでご覧になっているようで、自宅で気軽に参加できるのもオンラインならではですね。
時間は一コマ20分です。これは一人でやる時間としてちょうどよく、それ以上だと観る方の負担も大きいというのもあります。台本もありますが、緊張するスタッフは、今でも、合間の時間を使って練習しているようです。
編集部:それだけ盛り上げるにはどのような工夫が必要でしたか?
内田さま 元々の母親学級をまとめていた分娩室師長が中心になって、スタッフを取りまとめてくれたことで、皆にチームワークが生まれて完成したと思います。師長は各クラスの内容チェックも同時に行い、クオリティコントロールもしていました。
オンラインのほうが質問が気軽にできるから人気
編集部:オンラインクラスについて、患者さまはどのような反応ですか?
内田さま アンケートを実施しており、「オンラインがよい」「対面がよい」「オンラインと対面両方ともよい」を選択していただいていますが、結果は、「オンラインがよい」が多数でした。
コロナの心配がないこともそうですが、やはり自宅でゆったりと観られることや、質問を気軽にできることもよいようです(ウェビナーの場合、患者さまの映像や音声は入らない)。
クラスによっては対面でやっていた時よりも質問数も増えています。
編集部:人気のコンテンツは何ですか?
内田さま 一番人気は、無痛分娩についてのクラスです。近年では無痛分娩の興味関心度が高いため、質問がとても多く、満足度も非常に高くなっています。
他には入院時に必要な持ち物についても人気です。こちらは必要な持ち物以外に、プレゼントしている物やアメニティを紹介するため人気があります。変わったものでは、空き病室をiPadで撮影しながら行う「オンライン院内見学」があります。現在コロナ禍のため病室の見学ができないため、みなさん細かいところまで興味を持っていただいています。
事前問診と採用活動でもオンライン化によるメリットは大きい
編集部:他にもオンラインやネットの活用についてのお取り組みはいかがですか?
内田さま 当院では、全科とも外来受診前にアプリでWEB問診を済ませていただくようにお願いしています。毎回の通院の際にお願いしているのですが、最後にフリーコメント形式で「気になることはありますか?」という質問があり、ここには、紙や直接の問診では、遠慮がちな患者さまも気軽に質問ができ、さらに、それが事前に把握出来るため、先生との会話がスムーズになりました。
質問も含めて電子カルテに履歴を残すことが出来るので、医療の質が上がりますし、コロナ禍でのスタッフとの接触の機会も減らせるためメリットは大きいです。
また、今年度初の取り組みとして、「オンライン就職説明会」を行ないましたが、その成果に驚きました。
今までだと、病院で面接をしていましたので、どうしても近隣の方が中心になっていました。ところが、オンラインで説明会をすることで、全国の方から興味をもってもらい、なんと採用することができました。
編集部:これからのオンライン化についての考え方を教えてください。
内田さま:技術の進歩を利用してより便利になるようなサービスを行たいと思いますが、それだけでなく、おもてなしの心を持ったサービスを提供していきたいと思っております。