夫が娘の食事を初めて作った。パパが作ったごはんをにこにこ顔でおいしそうに頬張る結ちゃん。気に入ってくれた様子。
「これを毎食、俺のごはんも作りながらって大変だったよね……いつもありがとう」
自分で娘の食事を初めて作って、その大変さを知った夫は、これまでの妻の苦労を知り、感謝を伝えた。
「こんなの、だいぶ楽になったほうだよ」
あの当時の大変さを、夫は全然知らない。妻の本音がこぼれた。
毎日の些細な話をしたかった、ただ「それだけ」だった。
「離乳食のときのほうが、手間もかかってたし、精神的にもきつかったんだから」
たった1回、楽な食事を作ったくらいで、当時の大変さをわかったつもりにならないで。そう言われているような妻の言葉に、夫は謝るしかない。
「カズ君にも離乳食づくりをやってほしかったとかじゃないの。ただ、結がどんなものが食べられるようになったとか、何が苦手とか、苦労して作ったものをお皿ごと投げられて大変だったとか……そういう話をしたかっただけだよ」
その時々の娘の小さな成長や、大変だったこと、辛かったことを話したかった。
娘のことを一緒に知って、悩んだり笑ったりして過ごしたかった。
心が折れそうだったとき、「大変だったね」と一声、かけてほしかった。ただ、それだけだった……。
そんな妻の些細な望みさえ、叶えることができなかった自分に、夫は改めて後悔するしかなかった……。
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