夫が単身赴任から一時的に帰ってきて、数日経ったある日のこと。
息子と温泉に行きたいと夫が言いました。それを聞き、あぜんとしてしまう森田さん。温泉はおむつをはいている娘は入れず、森田さんが行きたくても行けないところなのです。
「私が行けないってわかっているのに、なんでそんなことを言えるの?」
森田さんは、そう言いたいのをグッと飲み込みました。大切な人だから嫌われたくない。その気持ちが強くなり、本当に言いたいことが言えませんでした。
それからも我慢の連続だった森田さん。いつしか我慢が不満に、さらに、不満が怒りへと変わってしまいます。
「ワンオペの私にはできない」
うらやましい気持ちがねたましい気持ちへと変わっていくのを、森田さんは感じていました。
単身赴任先から帰ってきて物理的な距離は近づいたのに、森田さんと夫の心の距離は離れていってしまったのです……。
あなたの子どもなのに、なんで他人事のように言うの…?
今まで森田さんは、夫とめったに喧嘩をしてきませんでした。しかしこのときは、お互いの心に余裕がなくなってしまい……。
「不満とねたましさ」という感情が行き着ついたのは夫婦の衝突でした。きっかけは、娘がぐずりだしたことでした。
娘が泣いているところを見て、「おーいっ! これ、あんこちゃん眠いんじゃないの?」「どうすんの? スマホいじってないでさー」と、夫。
他人事のような夫の言い方にイライラが爆発した森田さんは、「なんでっ!! いつも私がやんなきゃなの!?」と、自分でも驚くほど大きい声を出してしまいました。
いつもなら折れて謝ってくる夫も、このときは余裕がなかったようで、言い返してきました。
「なんで私は『大切な人』を自分自身で傷つけているのだろう」
そう思った森田さんでしたが、一度溢れ出た怒りの感情を止めることはできませんでした。
そして泣き叫ぶ娘を抱っこしたまま、史上最大の夫婦喧嘩は続いてしまったのです……。
◇ ◇ ◇
娘が泣いているのに、他人事のような言い方をする旦那さん。子育ては夫婦でするものなのにと、ママはイラっとしてしまいますよね。「どうすんの?」ではなく、「抱っこ代わるよ」「洗濯物は干しておくよ」などの言葉を旦那さんがかけてくれたら喧嘩に発展することもなかったのかもしれませんね。