倹約家の彼の行動に価値観の相違を感じる
夫は出会った頃から倹約家でした。会社へは水筒を毎日持参し、残業の多い仕事でも夕飯は自炊。実家暮らしで何もかもやってもらっていた私は、ただただ「えらいなぁ」と感心していました。
しかし、付き合い始めてから少々引っかかる部分が出てきたのです。外食する店を選ぶ際、横で「高いね」とつぶやくこと。私へのプレゼントがノーブランドで実用的なものであること。嫌ではないけれど、少し価値観の違いを感じずにはいられませんでした。
結婚してからは食料や日用品を一緒に買いに行くようになったのですが、ここでも彼の節約家ぶりを実感することになります。賞味期限が近づいて安く売られているいわゆる見切り品を、目ざとく見つけてさっとカートに入れるのです。私にとって見切り品は古い食品というイメージで、それをわざわざ買うという行動に驚きました。
ほかにも、高校生のときに買ったTシャツをいまだに着ていたり、学生時代にしかやっていなかったスノーボード一式をクローゼットにしまい込んだまま処分しなかったりしています。物持ちが良いのか、単に捨てられないだけなのか、いつまで経っても物が減らない夫の部屋に苦笑する日々です。
義母や義理姉の倹約行動にモヤモヤ
義母は料理上手で、家へ遊びに行くといつも手料理をふるまってくれます。材料の買い出しへ一緒に行くこともあるのですが、義母も当然のごとく見切り品を探します。この親にしてこの子ありなのだなと実感させられた出来事でした。
そして、結婚してから初めての私の誕生日。義母からプレゼントをいただいたのですが、なんとそれはセール品! 気持ちはうれしくても、セールでプレゼントを買うなんて私には考えられないと思ってしまったのです。
さらに追い打ちをかけるように、義理の姉からのプレゼントもセール品! プレゼントしてくれる気持ちはありがたいのですが、「値引き品を買ってまでプレゼントしてくれなくていいのに」などとモヤモヤしてしまいました。
いつの間にか、私まで倹約モード?!
このように、価値観の相違を感じる出来事が続き、私は節約に否定的でした。彼らのことを貧乏くさいと思っていた節もあったほどです。しかし、ある時気づいたのです。セール品のプレゼントは、相手を想いやったゆえの行動であるということに……。
プレゼントには予算があります。そのため、限られた金額の中でできるだけ質の良いものを贈ろうと思ったら、セール品はうってつけなのです。売れ残って値引きされたものでも、元々は高く売られていて価値のある品だったはず。セール品をプレゼントするのは、相手にできるだけ良いものを贈りたい気持ちからくる素敵な行動だともいえます。
私には、相手の気持ちを金額で測るクセがありました。独身時代はお金の心配をすることなく過ごし、予算という概念がなかったので、相手に使う金額がそのまま自分の気持ちと捉えていました。その価値観を周りにも当てはめてしまっていたのです。
そんな自分を反省し、セール品への見方が変わり義母たちに素直に「ありがとう」と思えるようになりました。
そんなある日、1人で買い物をしていると自然と見切り品の納豆を手に取っていた私。
「だって、今日食べる予定だから」「わざわざ高いほうを買う必要ないでしょ」
そんな言葉が頭をよぎり、夫や義母の考え方と完全に同じで思わず笑ってしまいました。家族として一緒に過ごしているうちに「節約の価値観」が私にも浸透していたのです。
長く一緒にいるために。歩み寄ることの大切さ
最初は理解できなかった相手の価値観も、その良いところに気づくと取り入れようと思うこともあります。最近の夫は、実用的ではないけれどもらったときに思わず笑顔になるようなプレゼントをくれるようになりました。「長く使えるものもいいけれど、渡した瞬間の『うれしい!』という顔が見られるなら、お金をかける価値があるね」だそうです。
著者/百田さく
作画/ちゃこ
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