頼りにしていた長女がいないと
コロナ禍で、度々学級閉鎖を余儀なくされ、その日は3年生の娘が学級閉鎖で休みになっていました。妹である1年生の娘は、普段から3年生の娘を頼りにしており、長女が学校に行かないので自分も休みたいと朝から何度も言っていました。学校までの道のりは、子どもの足で約30分かかり、坂道や大きな横断歩道もあります。子どもたちは、毎朝決まった時間に集合したあと、定刻になると町ごとに集団登校しています。
次女は重い腰を上げランドセルを背負いました。
「娘さんが来ていません」
学校から、本来8時に到着するはずの娘が来ていないと、妻に何度か連絡をしていたようです。しかし、妻は保育園児の準備、朝ごはんの片づけなどで忙しく、携帯の着信にまったく気が付かないまま家を出てパートへ行ってしまったのです。
何度かけてもつながらなかったらしく、学校から父親である私宛に電話があったのは9時過ぎのこと。「娘さんが学校に来ていません。今日はお休みですか?」。私は、ランドセルを背負って渋々学校の準備をする1年生の娘を見ていたので、真っ青になりました。
パートから戻った妻が自宅付近を捜すと…
次女の逃亡劇はこういうことでした。
玄関を出た次女は、何度も泣きそうになりながら集合場所に着きました。しかし、到着時間が遅れたため、町の子どもたちはすでに出発していたようです。そのため、次女はひとりで登校していたのですが、途中、不安になり自宅に戻りました。
けれども妻が外出したあとだったので家に入れません。ランドセルを背負った小学生がひとりでいると近所のおじいちゃんから声をかけられてしまうと思った次女は、電柱に隠れてゴミ収集車を見学しながら時間を潰していました。次女はそのまま帰宅時間まで電柱に隠れているつもりだったようです。
私からの連絡を受けた妻が、10分かけてパート先から帰宅すると、自宅から3軒となりの電柱の隙間からランドセルが見えました。次女の逃亡劇は幕を下ろしました。
子どもが多いので、わが家は上の兄姉に下の子のお世話を依頼することがよくあります。下の子がひとりになってしまうときの対策ができておらず、今回のようなトラブルが起こってしまいました。事故や事件にあわなくて本当によかったです。子どもにとって慣れない状況であれば登校に同行するなど、不安な気持ちに寄り添ってあげたらよかったと痛感した出来事でした。
著者:おのうえ たく
2男3女の父。趣味:読書、イラスト。サラリーマンとして働く傍らにぎやかで合宿のような大家族の日常を執筆中。