しかし、捨てられた離婚届を見つけてしまい、意を決して妻に聞くと、夫婦はもともと「赤の他人」であり、「紙切れ一枚で簡単に終わらせることができる関係」なんだと再認識できるように、離婚届を持っていたという。
でも、捨てられなかったのは「前のカズ君に言われたことやされたことを『無かったこと』にはできなかったから」。
専業主婦だからという理由で蔑まれ、見下され、家事も育児もすべて押し付け、家族の時間を蔑ろにされ続けたつらい日々は、今夫がどれだけ変わったとしても「無し」にはならない。それだけ、重くて深くて大きな傷となっていた。
離婚届は「お守り」だった
「たぶん、ずっと忘れないと思う。それもいいと、カズ君は言ってくれた」
これまで夫婦の間におこったことを忘れずに、お互い気遣いが欠けそうなとき、原点に立ち返れるように「お守り」として持っていたという妻。
「でも、カズ君と結と普通の生活を送っていたら、こんなふうに形にして残しておかなくても大丈夫かなって……」
妻はそう言いながら、目の前で離婚届を破り捨てた。はらはら舞う紙屑。妻と夫の確執が粉々に砕け散った瞬間だった。
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