こんにちは。保育士の中田馨です。子どもの成長発達とともに気をつけなくてはいけないことに、高さのある所から落ちる「転落」があります。
そこで今回は、転落事故を防ぐために保育所で行っている防止策とともに、家庭で子どもの安全な環境を考えていきたいと思います。
室内で起きやすい転落に関するヒヤリハット
子どもの転落事故の特徴(消費者庁)には下記のようなものがあります。
●子どもの発達段階によって事故が起こりやすい場所や状況が変わる
●頭部から落下しやすい(小さな子どもは体の大きさに比べて頭が大きく重心の位置が高いため)
●思わぬところに登ろうとしたり、いろいろな遊び方をする
子どもが生活する環境は、その時の子どもの発達状況によってその都度変えていく必要があります。「高いところから落ちる」というと、ハイハイや歩くことなどができ、活発に動き始めた子どものようなイメージがありますが決してそうではありません。
例えば、ねんねの時期の赤ちゃんの場合、「まだ動かない」と思い、ソファーや大人用のベッドに寝かしていたらクルリと寝返りをして落ちそうになった(落ちた)。ベビーベッドの柵をしていなくて落ちそうになった(落ちた)。ということもあります。
また、安全と思われがちな柵をしているベッドですが、つかまり立ちするようになるとベッドの中にある物を踏み台にしたり、ベッドの柵に足をかけてよじ登ろうとする子もいます。更に動くようになると、子どもの探索心はますます成長し、階段、玄関の段差、湯船、トイレ、本棚、椅子、机などを上ったり、のぞき込んだりして、ヒヤリとする場面が増えてきます。保育所で聞いた事例では、テレビ台に登ってテレビにつかまり立ちして、そのままテレビと一緒に後ろにひっくり返った!というお話もありました。
屋外で起きやすい転落に関するヒヤリハット
乳児の場合、抱っこをしていて落としてしまう場合もあります。「え? どういうこと?」と思いますよね。私の保育所で過去あった事例です。お休みの日にお父さんが3カ月の赤ちゃんを抱っこしてスーパーに行きました。赤ちゃん、機嫌が悪かったようでのけぞりました。お父さん支えきれずに落としてしまいました。幸い、落ちたところが段ボールの上で、かすり傷ひとつなく無事だったのですが……。
また、「少しなら大丈夫だろう」と自転車に座らせたままそばを離れたら、自転車ごと倒れてしまったという話は、いまだに時々聞きます。その他にも、活動の幅が広がり、公園の遊具で遊べるようになってくると、遊具から落ちそうになる(落ちる)こともあります。
転落事故を防ぐベランダ対策
「ベランダなどからの子どもの転落事故」。ニュースで見るたびに、何ともいえない気持ちになってしまいます。年齢の低い子どもは、「ここから落ちたらどうなる」というところまで考えることができません。目の前にある、興味や関心事に必死なのです。
では、ベランダや窓からの子どもの転落事故を無くすためにはどうすればよいでしょう?
まずは、子どもひとりでベランダに出られないように、窓から顔を出せないようにすることが大切です。そのためには、子どもが今何をしているかの確認が必要です。
そのうえで、下記のような予防策をとるとよいでしょう。
家庭でできる具体的な予防対策
●窓のカギをかける。
(私は自分の子育てのときは、必ずカギのロックをして更に補助錠をつけました)
●風通しするときは、子どもが出られない程度に開けて補助錠で窓が開かないようにする。
●窓を開けている部屋では子どもだけで遊ばせない。
●部屋を離れるときは、一時的であっても窓を閉める。
●窓のそばに、踏み台になるような物を置かない。
●ベランダには、踏み台になるような物を置かない。
また、「網戸をしているから安心」ではありません。網戸を押して網戸が外れて転落する恐れもあります。
保育園で行っている転落予防策
保育園では、「まさかそんなこと!」をするのが子どもだと思って、部屋や外遊びの環境づくりをするように心がけています。一例を紹介します。
●トイレのドアに外カギをつける。(子どもの手が届かない場所)
●階段の前にベビーフェンスを設置する。
●お風呂/洗面台のドアの前にベビーフェンスを設置する。
●窓の前にベビーフェンスを設置する。
●子どもが中に入っているときは、ベビーベッドの柵を必ず上まで上げる。
●「机の上には乗らない、椅子の上に立たない、棚に登らない」などのルールを明確にし、子どもに伝え実践する。
●ベビーカーのベルトは子どもの体格に合わせて取り付ける。
●ベビーカーのベルトをすり抜けて立つ子はおんぶひもでおんぶする。
●遊具で遊ぶときは、年齢にあった遊具で遊ばせる。必ず遊具のそばで保育者が見守る。
●遊具で遊ぶときは、前で遊んでいる子が安定した場所に行くまで待たせる。
●道路を歩いているときは保育者と手をつなぐ。階段などの高い段差がある場合ももちろん手をつなぐが、合わせて手すりを持つように促す。
保育園でおこなっている転落に関する予防策もお家で参考にできるものがあれば、実践してみてくださいね。
子どもが安全に生活するためには、「もしかすると、こうなるかもしれない」という、先を見据えた大人のちょっとした配慮が大切になります。
今一度、子どもの生活環境を見直してみてくださいね。