病室で声をかけてきた人はまさかの……
私が切迫早産で入院した初日、様子を見に来た助産師さんに突然「○○ちゃん?」と下の名前を呼ばれ、人違いではないかと思いつつ、その人をよく見ると見覚えのある顔でした。制服の胸に付けている名札を見て、彼女が高校時代の同級生であることを察知した私。
その助産師のAさんとは高校時代に出席番号が前後で、とりわけ仲良しだったわけではありませんが、普通に会話をする仲でした。そのときは10年ぶりの再会にお互いうれしさと懐かしさがこみ上げ、楽しく昔話などをしたのですが……。
何かとお世話になる助産師さん
私が入院した産院は助産師さんが固定担当制ではなかったので、毎日いろいろな人が検温に来たり、食事の準備をしてくれたりと、身の回りのお世話や入院中のサポートをしてくれます。もちろん診察のサポートも助産師さんのお仕事の1つで、入院3日目の内診の際に補助担当が、初日の問診以来のAさんでした。
産科の内診といえばショーツを脱いで内診台に上がりますが、助産師さんはその傍らで一部始終を見ています。私は普段から内診台に上がることに若干の抵抗がありました。しかし、相手は医師で仕事のため、知り合いではないので……という思いでこなしていました。ところが突如、高校時代の同級生にその場に立ち会われるというシチュエーションになり、妙にそのことを意識してしまったのです。
入院中に気が重かったこと
恥ずかしいなと思いつつ診察を終えると、最後に助産師であるAさんが股間を拭いてくれる運びに。同級生に股間を拭かれているのだと思うと恥ずかしさがこみ上げましたが、相手は仕事なのだからと思い、必死にこらえました。
その後の入院生活もさまざまな場面でAさんのお世話になり、何食わぬ顔をして過ごしましたが、内心では再び内診の補助担当が彼女にならないこと、さらには来たる出産の際も、担当がAさんにならないことを切に願っていました。そこにいる人が知り合いか、知り合いでないかで何が違うのか……とも思いますが、私は出産という行為は、知り合いではない人の中でするほうが気楽だったのです。
出産は幸い別の助産師さんが担当で、大きな叫び声とともに無事に終えましたが、振り返ってみると、あの必死すぎる現場の担当がAさんではなくて本当によかったと思いました。些細なことを気にしてしまった里帰り出産でしたが、Aさんがいたことで初出産の励みになったことも事実です。今となっては、彼女と再会できたことも、初出産の良い思い出となっています。
著者:澤崎凪/女性・ライター。1男1女の母。4歳差の姉弟の子育てに奮闘しながら、自身の体験をもとにした子育て関係記事を執筆するママライター。
作画:うちここ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています