「俺さぁ…」惚れた相手からまさかのひと言。唖然とする私に彼は…？！

 

アプリで出会った彼は、見た目が超タイプ。何度かメッセージのやりとりをしていると、その文章からなんとなく彼の内面も見えてきて、私は彼の中身にも惹かれていきました。しかし、実際に会ってみないと彼の本質はわかりません。雰囲気や口調、声、視線の動かし方や挙動など、一緒にいて落ち着く人と付き合いたいと思っていたので、早速会う約束をしました。

 

もしかしたらそのまま付き合って結婚なんてこともあるかも、と会う前から浮足立っていた私。久しぶりに感じるトキメキです。おしゃれにも気合が入ります。そして待ち合わせ場所にやってきたのは、プロフィール画像よりもずっと素敵な人で、トキメキは最高潮に。「すごい、マッチングアプリってこんな素敵な人に出会えるんだ」と感動すら覚えました。

 

そして向かったカジュアルレストランでランチをしながら、おしゃべりを楽しみました。私は沈黙が苦手で、初対面の人相手だと緊張してうまく話せないことが多いのですが、彼は上手に話を振ってくれて、時には笑わせてくれます。

 

「この人、私のこと好きなのでは！？もう付き合うのでは！？」とつい期待してしまうほど、気持ちを盛り上げてくれ彼に私はどんどん惹かれました。しかし、彼のあるひと言で一気にどん底まで突き落とされるのです。

そのひと言は今でも忘れもしません。なんと彼は「俺、恋愛は今興味ないんだよね」と切り出したのです。私はびっくりして「いやいや、私たち恋人探し用のマッチングアプリで知り合ったんじゃなかったでしたっけ？ そんな初期段階ですれ違うなんてこと、許されないと思うんですけど」と喉まで出かけた言葉は、彼の巧みなトークでかき消されてしまいました。

 

どうやら彼には、この世界を良くしたいという夢があるらしく、現在は海外の大学に社会人入学するための勉強で忙しいのだとか。言い訳を言い訳と感じさせないような明るさと、まるで世界中が味方と言わんばかりの全能感が溢れかえった彼の目は輝きに満ちていました。

 

そして、「これだけ忙しい僕が今日会えたのは奇跡みたいなものだね。ちなみに君と恋愛関係になるつもりはないよ」と堂々と言ってのけます。もはやこれは新手の詐欺かもしれない、と思い始めたころ彼は「じゃあお互いにこれからも頑張ろう！」と言って帰っていったのでした。1人レストランに残された私は「なにこれ、ドッキリ？」と唖然とし、動けずにいました。

 

 

帰ってじっくり考えたところ、彼の一連の言動はもしかしたら相手を不愉快にせずお断りする手段だったのではないかと思いました。もしかしたら会ってみたら違った、と思ったのでしょう。彼なりのやさしさだと考えると、お金を求められなかったのも納得です。

 

いまだにモヤモヤしていますが、マッチングアプリでの出会いにはこういうケースもあるんだなと学んだ一件でした。そこからはマッチングアプリはほどほどにし、友だちにいい人を紹介してもらうようになりました。

 

著者／牧村春香
作画／ちゃこ