母にとって子どものピンちゃんへの反抗は地雷のひとつで、口ごたえや反抗的な態度が母の耳に入ると見せしめとして容赦ない暴力が加えられます。
あおいさんは母とピンちゃんの関係が長くは続かないことを願っていますが、この地獄はまだまだ続くのでしたーー。
ピンちゃんが望む理想の「家庭像」を演じる家族
ピンちゃんの機嫌を損ねないよう、顔色を窺う毎日が常となってしまった頃、あおいさんの10円ハゲもいつの間にか消えていました。
そんなある日、母がタンス整理をして出てきた写真をあおいさんと次女のあかりさんに見せてくれました。そこに写っているのは、申し訳程度の小さな誕生日ケーキに満面の笑みを浮かべている三女あまね。ケーキのサイズと不釣り合いな笑顔に、母とあおいさんは思わず吹き出します。
そこへピンちゃんが帰宅し、急いで写真を片付ける母と姉妹。いつの頃からか彼の知らない過去の話はタブーという暗黙のルールができており、母はピンちゃんの圧力に怯えていました。そんな母のピンちゃんへの依存に子どもも同調し、あおいさんたちは彼の望む家庭像を演じるようになるのでした。
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三女あまねの1歳の誕生日の頃は、まだ父との離婚前のことで家族揃っての思い出のひとつでした。父の借金の返済のため生活は困窮しており、母には大変だった思いがよみがえりますが、子どもたちにとってはやさしい父との幸せな記憶だったはずです。そんな心から笑える日が、ピンちゃんとの生活の中でもあることを願うばかりです。