それは、夫の会社の懇親会で浮気の写真をばらまき、会社の人たちに夫の失態を知ってもらうということでした。懇親会当日、それを実行すると、会社内での夫の信頼は地に落ちてしまったのです。
会社での信頼がゼロになり、ひどい扱いを受ける羽目になった夫は、離婚届を持って加奈子の元に現れます。加奈子は離婚届にサインをすると、離婚は成立。離婚後は銀行へ行き、宝くじの当選金である3億円をすべて受け取ることに。しかし、この3億円には手をつけず、加奈子は新たな仕事を見つけると、そのお金で生活を送っていました。
未だ夫と離婚した事実を息子に言えず、「お父さんは?」と聞かれる度にはぐらかしてきた加奈子でしたが、とうとう息子に「お父さんまだ忙しいって?」と質問されてしまいます。このときも離婚の事実を伝えることができずに嘘をついたのですが、心を痛めていました。
「もしも、あのまま宝くじが当たらなかったら……」加奈子はそんなことをひとり心の中で考えていて……?
"宝くじが当たっていなかったら"妻はそんな未来を想像していて…
宝くじが当たっていない未来を考えていた加奈子。
(何より想太に寂しい想いをさせることもなかった)
そんな風に思い、胸を痛めていました。
加奈子が黙っていると、口を開いた息子。
「……お母さん、ごめんね」
「今度から、わからないところは先生に聞いたり、
自分で調べたりしてみる。自分でなんとかしなくっちゃ」
「お父さんがいなくても大丈夫だよ」
そう言うと、息子はキリッとした表情で
加奈子を見つめていたのでした。
◇ ◇ ◇
もしかしたら、このとき加奈子に自分の気持ちを言葉で伝えることで、息子は"もうお父さんに頼る自分とはサヨナラしよう"と決意したのかもしれません。薄々「お父さんはもう帰って来ないんだ」と、悩んだり苦しんでいた時期は確かにあったことでしょう。しかし、前を向こうと気持ちを切り替え、前向きな言葉を母親に対してかけることができるなんて、想太君はやさしくて強い息子ですね。