それは、夫の会社の懇親会で浮気の写真をばらまき、会社の人たちに夫の失態を知ってもらうということでした。懇親会当日、それを実行すると、会社内での夫の信頼は地に落ちてしまったのです。
会社での信頼がゼロになった夫は、離婚届を持って加奈子の元に現れます。加奈子が離婚届にサインをすると、離婚は成立。離婚後は銀行へ行き、宝くじの当選金である3億円をすべて受け取ることに。しかし、この3億円には手をつけず、加奈子は新たな仕事を見つけると、そのお金で生活を送っていました。
未だ夫と離婚した事実を息子に言えず、はぐらかしてきた加奈子でしたが、花火大会の日の夜、突然息子が「お父さんがいなくても大丈夫だよ」と言ってきました。その言葉を聞いた瞬間、思わず息子を抱きしめた加奈子。
それから月日は流れ、息子は受験生として勉強に励む日々を送り、無事志望校に合格。そして、とうとう息子が加奈子の元を離れていく日がやってきました。「いってらっしゃい!」と息子を送ると、リビングに行きテレビをつける加奈子。すると、そこにある映像が流れるのですが……?
テレビをつけると、仲睦まじそうな家族の映像が目に入ってきて…
息子を見送った後、リビングでテレビを見ていると、
画面には親子の映像が映し出されました。
その映像を見て、物思いにふける加奈子。
自分が離婚という選択をしたことが、
"果たして正しかったのか、間違っていたのかわからない……"
そんなことを考えていました。
離婚してからしばらく経っていたものの、
夫と息子の仲を引き裂いてしまったことについて
ずっと負い目に感じていたのです。
(私はずっとこれからも、
その罪悪感を抱えて生きていくのだろう……。
誰にも言わず、ひとりだけで……)
心の中でそう呟くと、パソコンを閉じた加奈子。
明るい表情に切り替えると、
息子に電話をかけたのでした。
◇ ◇ ◇
3億円という誰もがうらやむ高額当選。第三者の立場からすると、「3億円も当たったんだから、もっと喜んでもいいんじゃない?」と思う人もいるかもしれないですが、実際加奈子の立場になって、いろいろな感情を経験しないと、分からない何かがあるのかもしれないと感じました。ただ、どんなに悔やんでも時間は元に戻りません。少しずつ加奈子の心の傷が癒えていき、これから先の自分の人生を楽しむことができますように……。