夫の光貴(こうき)、幼稚園児の娘の美海(みなみ)と共に暮らす由依(ゆい)。医師として多忙な由依の代わりに、光貴が美海の面倒を見ることが多かったのですが……。
良い父親
医師の由依は、人手不足もあり、ますます多忙を極めていました。娘の美海の世話も夫の光貴にほぼ任せきり。しかし、光貴は嫌な顔ひとつせず、美海といろいろなところへ出かけています。
その日は、森林公園からパンケーキを食べに行き、その後動物園に行ったとのこと。「由依とも行きたかった」と言う光貴に対し、「ごめんね、今度はみんなで行こうね」と由依。美海の面倒を光貴に任せがちなことを申し訳なく思っている由依に、光貴は「俺の方が収入低いから、育児くらい積極的にやらないと」と言うのでした。
娘と新車でドライブ
光貴は「車をもう一台増やしたい」と由依に打診します。ファミリーカーではなく、ジープのようなおしゃれな車がほしいとのこと。
もともと光貴が乗り物好きなことを知っていた由依は二つ返事でうなずきます。美海の世話をがんばったご褒美として、光貴はその週末に新車を手に入れたのでした。
1カ月後――。
ようやく新車が納車され、ご機嫌な光貴。次の日に美海を連れて、海岸の方までドライブするとのこと。勉強会と仕事で一緒に行けない由依ですが、いつも通り「美海をよろしくね」と送り出すのでした。
失った信頼
次の日――。
「あなた、今どこにいるの」
「美海とドライブ中だよ、PAで休憩してる」
「は?美海はベッドの上なんだけど?」
実は、美海は交通事故に遭い、由依の働く病院の救急に運ばれてきたのです。光貴の「美海と一緒にいる」というのは真っ赤な嘘。光貴は1人で出かけていたのでした。
言い訳ばかりを並べる光貴に、由依は「今すぐ病院に来て」と言いますが、なんと「1時間半くらいかかる」と答える始末。長時間放置する気満々だった光貴との話し合いを諦め、由依は美海から事情を聴くことに決めたのでした。
1時間後――。
「渋滞にはまった」と連絡をしてきた光貴。由依は「もう一生来なくていい」と告げます。
というのは、これまでにも何度か美海を置いて光貴1人で出かけていたことが発覚したのです。そのたびに、美海にお菓子を買い与えては口封じをしていたことも……。
そして今回も、1人で留守番させられていたという美海。家の中が退屈になり、公園に遊びに行こうとしたところ、事故に遭い、右足の骨折、全身の打撲と擦り傷、頭を数針縫う大怪我を負ったのでした。
「とりあえず無事でよかった」という光貴に、怒りを抑えきれない由依。そして「まだ隠してることがあるでしょ?」と畳みかけます。すると光貴はナンパした女性と新車でドライブデートに行っていたことを白状します。車のお金はいつか返すと言って謝る光貴に、由依は言い放ちました。
「いつかじゃなくてすぐに返してもらう。これからは私一人で美海は育てます」
娘と遊んでくれていると思っていた夫が、他の女性と楽しんでいたこと、しかも娘を危険にさらしたことに失望した由依。出て行かないでくれと懇願する光貴に「娘も車も私が大事にするから」と別居をきっぱり告げるのでした。
そして、美海の幼稚園卒園後、光貴と由依は完全に別居。光貴は借金をして車の代金を由依に返し、今も「美海の面倒を見るから戻ってきてくれ」と由依に懇願しています。一方、由依は職場の病院の近くに引っ越し、学童やシッターを活用して、美海が1人にならないように配慮しながら仕事を続けています。後日、詳しく夫の身辺を調べた結果、光貴は既婚者であることをバイク仲間に告げず、ツーリング中に若い女性を率先してナンパしていたことまでわかった由依。よりを戻すどころか、離婚を視野に入れるのでした。
嘘を重ねて、妻からの信頼を失った夫。娘の命を脅かすような夫ですから、信頼の回復は難しいですよね。今は離婚を視野に入れている由依さん。心穏やかに過ごせる落ち着いた日々が早く訪れますように。