滅多に買い物になど出掛けない私たち夫婦。実は夫の趣味はイマイチで、過去にもらったプレゼントも微妙なものばかり……。義父のプレゼントを、夫には任せておけません!
160万のくたびれた高級時計!?
たくさんのお店をまわったものの、これだ! というプレゼントは見つからず……私たちはヘトヘト。ひと休みしようと裏路地にあるカフェに入ろうとしたところ、小さな時計屋さんを発見しました。
ちょっと見てみようと言って、夫はさっさと店へ。なんだか嫌な予感がしたので、私も後を追って店に入りました。どうやらこのお店、一見さんお断りの会員制のよう。定員さんが止めるのもきかず、夫はショーケースをじっくり見て回ります。
しばらくして夫が「これは!」 と声を上げたので近づいてみると、そこにはくたびれた腕時計が……。どうしても欲しいと言ってしつこく交渉し、夫はその腕時計を購入したのです。
理解に苦しむものの「この時計をお父さんにプレゼントしたら、絶対喜ぶよ!」 と、ひとりで盛り上がる夫。まさかこんなにくたびれた腕時計をプレゼントにするつもりだと思っていなかった私は一瞬慌てましたが、言っても聞かないので諦めることにしました。
手付金を払い、後日取りに行くことにして店を後にしたのです。
夫が企んだこととは…
米寿のお祝いが近づくにつれ、本当にあの時計でいいのか迷いが生じ始めた私……。最後の念押しと思い「このプレゼントで本当に良いのか」と夫に尋ねてみました。
すると夫は「え?気づいてなかったの?」と驚いた顔。そして私に腕時計を選んだわけを話してくれました。
それを聞いて私はびっくり仰天! 義父にプレゼントするのが楽しみになりました。
そしていよいよ、腕時計を受け取りに行く日。やってきた私たちの顔を見て、店員さんは満面の笑みで早速支払いを求めてきましたが、夫はそんな大金は持参していません。
その代わりに、夫の後ろには同行した警官が。なんとこの店、盗品を流す店だったのです。後日、お店は摘発され、店員は逮捕されたのでした。
ボロボロの腕時計の正体
夫はショーケースに並んだ腕時計を一目見て、お義父さんが大事にしていた時計だとわかったそう。盗まれたときの悲しそうな顔が今でも忘れられず、それ以来ずっと探していたのでした。
腕時計をキュッキュと拭くと、刻まれたお義父さんの名前が出てきました。これはお義母さんから結納返しにもらった大切な時計なのでした。
今でも仲が良い義父母の絆の証とも言えるこの時計は、本当に大切なもの。夫が機転を利かせてくれて、本当に良かったです。
もちろんお義父さんの米寿のお祝いは大成功! 涙を流しながら喜ぶ姿を見て、私までもらい泣きしてしまいそうでした。
いつまでも仲の良い夫婦がいる一方、だんだんと一緒にいる時間が少なくなったり、お互いが空気のような存在になったりする夫婦もいるのが現実です。子育てで忙しかったり、子どもの手が離れてそれぞれの時間を楽しむようになったりと、夫婦のライフステージにも変化がありますが、定期的に一緒にいる時間を作り、夫婦仲を育むことも大切ですね。