母の病状が悪化していると感じたわたしちゃんは、「病院に行ったほうがいいのでは」と父に相談します。しかし、父は家族と向き合おうとせず、外で女の人を作り、あまり家に帰ってこない状況が続いていました。
夫婦ゲンカも増え、母の異様な絶叫が響くわたしちゃんの家。
「お父さんにどうにかしてほしい。でも信頼できない。母の病気だけではなく、頼れる大人がいないことがつらい」
わたしちゃんが自身の状況に絶望していると……。
突然、状況が一変…!?
ある日、家に帰ると母の姿はなく、父方の祖母に迎えられたわたしちゃん。
「お母さんに入院したよ。わたしちゃんも今まで大変だったな。悲しいだろうけど、頑張ろうな」
祖母にイラッとするわたしちゃん。母が入院したと聞き、なんとも言えない複雑な心境でした。
「驚き、心配、安心、喜び、不満、嫌悪……」
母がいない平和な生活をうれしく思ってしまったり、病気がよくなるのか期待したり、さまざまな感情が渦巻きます。
「『悲しい』のひと言で済ませないでよ」
大人になったわたしが振り返るように、複雑な心中のわたしちゃんは、やさしくしてくれる祖母に素直になれずにいました。
小学校高学年になると、積み重なったつらい境遇は、わたしちゃんの考え方に影響を及ぼします。
テレビや友人の家庭での不幸話に、まったく共感できず、「病気だろうが、離婚だろうが、ちゃんと母親と意思疎通できることがうらやましい。かわいそうとか思えない」と、自身の不幸と比べるようになります。
「それくらいずっと我慢してたし、つらかったんだね」
大人になったわたしが、当時のわたしちゃんに寄り添いますが、成長しても他人と比べてしまう気持ちは残っていました。しかし、大人になった今は、その気持ちごと認めるしかないのだと、わかったのです。
周りの不幸話を聞いても、「うちよりマシでしょ」と感じてしまうほど、長くつらい状況が続いていたわたしちゃん。甘えたい盛りの幼い子どもにとって、近くにいる母親と心が通じ合えないというのは、子どもが追い詰められてしまうほど苦しいことですよね。
母の入院や、家を手伝いに来た祖母の助けにより、状況が少しでも改善し、わたしちゃんの心が軽くなることを願うばかりです。