友だちの家に行くたびに、友だちの家庭が羨ましくて仕方ない気持ちになっていたわたしちゃんは……。
娘の気持ちに気づかないふりをする父
※訂正:(誤)わずらわわし→(正)わずらわしい
毎年夏休みには、父と2人、父の田舎に1週間ほど帰っていたわたしちゃん。
生活の中に、突然の大声がなく、奇行をする人がいないとうだけで、天国のように感じていました。
平和な生活は、現実のみじめさを実感する時間でもあり、「家に帰るの嫌だな」とわたしちゃんは、夜な夜な涙を流してしまいます。
「なんでうちは平和じゃないんだ?」
泣いているわたしちゃんに気づく父ですが、無言のまま。わたしちゃんは、父から反応がないことに、がっかりしていました。
「お父さんになんで泣いているかわかってほしかったよね」
「ずっと、周りの大人になんとかしてほしかったよね」
大人になったわたしが振り返るように、当時のわたしちゃんは、「わたしが毎日つらい気持ちでいることをわかってほしい」と期待しながら生活していました。
そして、いよいよ母の病状が深刻になっているように思えてきたころ。病院にかかる必要性を感じ、父に相談しますが、「行こうとしないんだよな〜」と父は、のん気に構えていました。
母から「お父さんは女の人のところに行ってるから帰ってこないんだよ」と言われたわたしちゃん。
いつもの妄想なのか、事実なのか、わからずにいるものの、わたしちゃんの心に暗い影を落とす言葉でした。
夫婦ゲンカが増え、母の異様な絶叫を耳にしながら、「お父さんにどうにかしてほしい」と思っていたわたしちゃん。しかし、「他に女の人がいる」と耳にしたわたしちゃんは、お父さんを信頼できず、悲しみに包まれます。
「ちゃんと自分たち家族と向き合ってほしかった」
「お父さんには逃げる場所があるけど……ひとりぼっちのような気分で本当につらかった」
わたしちゃんが“つらい”と感じていた原因は、母の病気のせいだけではなく、家族に向き合わない父や、ケンカが絶えない両親、なんとかしてくれる大人がいないこと……さまざまな状況に、絶望していたのです。
精神疾患の母がいる家庭で、「自分や家族と向き合ってほしい」と父に求めるのは当たり前のこと。わたしちゃんと同じように、父もつらい思いをしていたかもしれませんが、大人と違い逃げ場がない子どもをフォローできるのは、周りの大人だけです。最も身近な父親が、子どもからも目を背けているようで、わたしちゃんを思うと胸が痛みますね。
「なんとかしてくれる大人が必要でした」と大人になったわたしが回想していますが、家庭環境に悩みを抱えている子どもに、外の人間が何かできることがないのか、考えさせられます。