「悲しいだろうけど、頑張ろうな」という祖母からの言葉に、複雑な心境のわたしちゃん。母がいない平和な生活をうれしく思ってしまったり、病気がよくなるのか期待したり……。
「『悲しい』のひと言で済ませないでよ!」と祖母に怒りすら覚え、さまざまな感情が渦巻いていました。
そんな気持ちのまま、尋ねた母の入院先で……。
母の変化に戸惑う少女
母の入院先にお見舞いに行ったわたしちゃん。
「早く退院して家に帰りたい。頑張るから待っててね」と母は、人が変わったように涙を流していました。
病状の変化で、不安定な状態の母。
「わたしちゃん! 家にいられなくてごめんね……」とわたしちゃんを抱きしめます。
「なんか嫌……驚き……不満……心配……」
わたしちゃんは抱擁してきた母に対し、マイナスな感情を抱きますが、それを隠していました。
「わたしちゃんが抱きしめてほしいときに全然してもらえなかったのに……急にされても素直に喜べないよね」
そして、「母が病気なことに自体に、罪悪感を持っていた」と振り返る、大人になったわたし。
「母親が心身ともに元気でないと、自分を責めるような気持ちになるのでしょうか……」
当時のわたしちゃんは、罪悪を強く持っていました。
退院した母は、陽性症状(妄想や幻覚)がおさまり、陰性症状(元気がない、意欲低下など)が出ていました。
騒いでいた母とは一変し、わたしちゃんにやさしく語りかける母に、戸惑いを感じていたわたしちゃん。
「もう生理はきた?」と母に尋ねられますが、わたしちゃんは初潮を迎えたことを隠していました。
しかしある日、ゴミ箱をあさった母は、わたしちゃんに生理がきていることに気づき、「教えてよ……」と涙を見せたのです。
わたしちゃんは激怒。
「ゴミ箱あさって人のゴミ見んなよ! 信じられない! ほっといてよ」
生理のことを母に話したい気持ちがあったわたしちゃんですが、今まで母の異常な姿ばかり見てきたわたしちゃん。相談できるはずもありませんでした。
「それなのにゴミをあさられて、生理のことが突然バレたら、恥ずかしくて悔しくて、怒っちゃうよ」
大人になったわたしは、冷静に当時を振り返ります。わたしちゃんはこのころから、母に対して怒りばかり感じるようになっていったのでした。
幼いころから積もりに積もった母への負の感情。突然、母を信頼して心を開くようなことは難しかったのではないかと、容易に想像できてしまいます。
子どもは親の反応や、態度にとても敏感ですよね。子どもに真っ直ぐな愛情を注ぐことはもちろんですが、親子だからこそ、信頼関係を積み重ねていくことが大切なのかもしれません。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。