ある日、突然家に訪ねてきたわたしちゃんの友だちを怒鳴りつけ、追い出した母。わたしちゃんは驚きますが、何よりも自分の友人関係まで壊されてしまうのではと、とても悔しい思いをします。
不安定な母の病状に振り回され、「安心できる場所を一生懸命探すしかなかったのに、自分の世界も壊されたよう……」と感じていたわたしちゃんは……。
大人になっても消えない心の傷
家族で車で出かけることになったある日。車に乗り込む前に、「行かない!」と怒り出した母を置いて行った父。
置いてきぼりの母を車内から見たわたしちゃんは、罪悪感を抱いていました。
大人になったわたしは、「たくさん罪悪感を持っていてつらいよね。大変な家庭だけど、お母さんに愛があるわたしちゃん」と、当時の自分を振り返ります。
「お母さんの病気も、不幸も、わたしちゃんはなーんの責任もないんだよ」
そして、「親が幸せであることって、大事ですね」と、大人になったわたしは感じていました。
このころのわたしちゃんは、自分の体に大きな穴が空いてしまっている感覚がありました。
欠如感を感じ、さまざまなことが“自分軸ではない”という感覚でした。
趣味に没頭しても、友だちと過ごしても、恋人ができても、自分の家庭ができても埋まらない感覚。
何を手に入れても、常に寂しさがつきまとっていました。
「この穴がなければ、もっと幸せで活躍していたかも……」
大人になったわたしが穴を覗いてみると、「やさしいお母さんがよかった。我慢ばっかりするのいやー」という声が聞こえてきます。
「自分の声を大事に拾うといろいろなことに気づけるようになった」
大人になったわたしは、「胸の空洞は、知識や経験で埋まるものではなく、たくさん我慢していた気持ちに気づいて、認知のゆがみを直すことで、ちょっとづつ埋まってきている」と感じているのでした。
母の症状の変化に一喜一憂し、時に罪悪感すら覚えていたわたしちゃん。どんな状況でも、母に対して愛情があったからこそ、わたしちゃんは苦しい思いをしていました。子どもは親の姿を見て育ちます。「親が幸せであることは大事」とありますが、その通りですね。