「うるさい! ほっといて!」
まさかこれが最後の会話になるとはーー。脳梗塞で倒れた祖母は病院に運ばれ、駆けつけた叔母から祖母は娘である自分や息子よりもこだころ.さんのことを心配していたと聞かされました。
祖母はなんとか山場を乗り越えますが、医師から意識は戻ることはないと告げられるのでした……。
話せなくなったけど、以前よりも祖母と一緒にいる時間が増えーー
命を繋ぎ止め、目を開いていて声も出せるものの、話せない植物人間状態となってしまった祖母。
それから半年が経ち、車の免許を取ったこだころ.さんは実家を出ました。
月に何度か祖母に会いに病院へ行き、いろんな報告をしました。返事はなくても話を聞いてくれていると感じていて、以前よりも祖母と一緒にいる時間が増えました。
ある日、仲の良い友だちに祖母の話を聞いてもらうと共感をしてくれるも、自分と祖母の関係性とは一緒にしてもらいたくないとモヤモヤした感情を抱えるのでした。
友人と別れてからもモヤモヤが消えず、気づくと病院に足を向けていました。祖母の元へ行くと、こだころ.さんの感情は爆発。
「今日、友達にひどいこと思っちゃったよ。ばーちゃと話したいよ…抱きしめてほしい…」
祖母が倒れてから初めて涙を流しました。すると、祖母が急に大きな声でしゃべり始め、その目には涙を浮かべていました。祖母が懸命に返事をしてくれたんだと思うと胸が熱くなり、絶対幸せになろうと思えました。
その後、入院費用が払えなくなったため祖母は自宅に戻り、祖父が祖母の世話をすることに。耳が聞こえず限界があるため、りーもお世話をしてくれることに。
彼氏ができたこだころ.さんは、県外に行く彼についていくことにしました。
2年後、まだ県外にいたこだころ.さんは、叔母からのメールを受け取ります。メールには、祖母が前日の夜息を引き取ったことが告げられていました……。
◇ ◇ ◇
最後の会話は八つ当たりをしてしまい苛立ちをぶつけた状態。それ以前も、祖母を遠ざけて素っ気ない態度の日々でした。会話ができなくなって初めて存在の大切さを痛感。返事はなくとも何かあると報告しに行き、それまでよりも一緒にいる時間が増えたこだころ.さん。
祖母のことを共感してくれた友だちに卑屈に反応してしまい、またそんな反応の自分を責めたこだころ.さんの救いはやはり祖母でした。悲しみや反省などいろんな感情が爆発して祖母のそばで涙を流していると話せない祖母が懸命に大きな声を出してくれ目には涙。必死に励ましてくれていることが伝わります。このとき言葉はなくても、こだころ.さんと祖母の気持ちが以前のように通じ合えたのは切なくも心に迫るものがありますね。