突然届いた、巨大な段ボール箱
祖母は若いころの病気が原因で左手が不自由な上、膝を壊しており、あまり動くことができませんでした。80歳を前にして独居となった後も、頑なに自宅での生活を望み、ヘルパーさんや母が通うことで何とか暮らしていました。祖母が住んでいたのは、昔ながらのご近所付き合いがいまだ残っている地域。特に、数件先にとても面倒見の良い方がいて、独居の祖母を気に掛けてくれ、何かあれば連絡をくれていました。
そんなある日、その方からの電話で「家の前にでっかい段ボールがある」と言われた母。たまたま実家にいた私も一緒に行ってみると、たしかに一抱えもある大きな段ボールが1つ置いてあるではありませんか。確認すると、間違いなく祖母宛ての荷物です。開けてみると、中には大量の洗剤類が……。慌てて祖母に聞いたところ、「この間電話がかかってきて買った」と言うではありませんか!
つまり、自宅の固定電話に勧誘の電話がかかってきて、相手に聞かれるがままに住所などを教えたそうなのです。支払いはどうしたのかと言うと、わからないというので、あちこち調べてみたところ、箱の中から振込用紙を発見したのでした。
固定電話だから起こるワナを回避してみたら
幸いそのときはクーリング・オフ(一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回できる制度)で何とかなりましたが、この出来事は私たちにとって衝撃的でした。オレオレ詐欺などもあるので、このまま祖母の家に固定電話を置いておくのは怖い、けれど、祖母の古い知人は固定電話に連絡をして来るからなくすのもどうなのか……。
考えた末、固定電話は母の携帯にすべて転送して様子を見ることにし、普段の連絡用に携帯電話を契約することにしました。今後の手続きにおける利便性を考え、名義は私にして、大手キャリアのお年寄り向け製品を購入。開くと画面の下に3つボタンがあり、そのボタンを押すだけで登録した電話番号に簡単にかけることができます。祖母がわかりやすいように、画面に直接マジックでどのボタンが誰にかかるのかを書いたことで、以前よりも簡単に電話がかけられるようになり、番号がわからなくなって電話がかけられないという問題を解決することができました。
また、それまでの固定電話は棚の上にあって、かけるにしても出るにしても時間がかかっていましたが、以前よりも側に置いておけることで、電話に出るまでの時間も早くなりました。また、登録した番号以外からの着信は無音に設定することで、防犯面でも少し安心できる要素が増えました。
携帯電話がお守りに
最初は、携帯電話という新しい物を祖母が使えるのかと心配しましたが、意外にもあっさり受け入れられました。それどころか、簡単に母に連絡ができるようになり、安心感が増えたと大喜び。実はそれまでも「困ったことがあって電話がかけたいのに、番号を書いた紙をどこに置いたかわからなくてかけられなかった」「何度かけても別の人につながってしまった」などということがあったのだそう。
また、固定電話によくわからない電話もちょこちょこかかって来ていたそうで、だんだん出るのもおっくうになっていたのだとか。実はその中には市の職員からの大切な電話もあったのですが(後日、母に連絡があって判明した)、理解力が落ちてきた祖母には、難しい話はすべてよくわからない変なものという判断をされてしまったようです。そういったこともあり、携帯電話への切り替えは功を奏したのでした。
その後、デイサービスのお迎えの際に電話で連絡してもらえるようになったり、出先で迷子になったときに連絡がついたりと大活躍。母も、安否確認が簡単にできるようになり、特殊詐欺対策としてもよかったと大喜びでした。
まとめ
箱いっぱいの洗剤を見たときには思わず「うわぁ」と叫びそうになりましたが、後から思えばこれが良いきっかけとなってくれました。大きな被害がなかったのが不幸中の幸いでしたが、その後しばらくは大量のダイレクトメールが届き、個人情報の流出は怖いなぁとしみじみ思うことに。思い切って携帯電話という文明の利器を投入したことで、お互いの安心感も増え、連絡がつきやすくなり、生活が快適になりました。
お年寄りは新しいものになじむのに苦労するという話を聞きますが、その時々で環境や状態と相談しながら、合うものを導入していくのは大切なことだなと思った次第です。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
文/おおさわ
イラスト/sawawa
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