誰も知り合いのいない幼稚園
突然の転勤であったため、息子の幼稚園に関しては一度の見学しかできないまま入園を決めなければいけませんでした。それでもいい幼稚園だと思い、納得した上で入園。わが子の初めての幼稚園生活に、私もワクワクドキドキで気持ちが高ぶっていました。
そして迎えた入園式。保護者も多く集まるこの場で、ふと私は「誰か知り合いはいないかな……」と思いました。まったく知り合いのいない幼稚園で心細かった私。大学時代の友人と偶然再会してママ友になれたらいいなとも思っていたのです。
まさかの人物が…!?
ただ、周りを見渡しても知り合いは誰一人としていません。「偶然再会なんて、そんな都合のいいことないか!」と思っていた矢先のこと! 「あれは……?」と思う人物を発見したのです。
それは何と大学時代の元カレ! 付き合った期間は、ほんの数カ月と短い時間。しかも、私が一方的にフラれるかたちで終わってしまった苦い思い出のある彼です。私はとても動揺。たしかに知人との再会を望んでいましたが、まさか元カレとは……。
動揺した果てに…
しかし、このとき世間はコロナ禍。マスクが必須の日常であったため、はっきりとした素顔はわかりませんでした。入園式から帰宅後、私はすぐに名簿をチェック。ところが、元カレの苗字はありません。「もしかしたら婿養子かも」など、いろいろと考えましたが……。
考えているうちにふと「なんで過去にフラれた男のことを考えているんだろう」と思ったのです。そして、「こんなことで動揺しちゃうなんて私もまだまだだな」という考えに。私は紛れもなく今、幸せであり、幼稚園の主役は子どもたちだと気付いたからです。
マスクが必須でなくなった現在、幼稚園の行事で元カレの顔を確認する機会がありました。結果からいうと、今でも元カレかどうかわかりません。私はもう元カレの顔を覚えていなかったのです。それだけ今の生活に満足し、毎日が充実しています。たとえ元カレ本人だったとしても、私の生活は何も変わりません。
著者/匿名
イラスト/もふたむ
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