義姉から突然「この貧乏人が!ふざけんじゃないわよ!」と電話口で怒鳴られた私。
「なんでこの社長夫人の私が子守りなんてしなきゃいけないのよ!」「今日なんてエステに出かける直前だったのに、あなたの子どもの面倒を押し付けないでよ!」とヒステリックにまくしたてられました。
少し落ち着いた義姉から事情を聞くと、義母が「膝が痛いから」などと言って子どもを義姉の家に連れてくるそうです。「うちに直接預けてなくても、お義母さんが連れてくるなら結局一緒よ!困ってると思って協力していたけど、もう限界!!」と叫ぶ義姉。
しかし、私たちは子どもを一度も姑に預けたことがないのです……。
子どもの正体
「とりあえず、子どもはあんたの家の前に置いておいたから!」「あの悪ガキが外で悪さする前に早く家の中に入れなさい」と言い残して、電話を勢いよく切った義姉。
私が出先から家に戻ろうとしたところに、今度は義母から電話がかかってきました。
「いきなりごめんなさいね。子どもは私がちゃんと迎えに行ったから安心して」「この子のことは秘密にしておいて」と言われても、何がなんだかわかりません。
不審に思った私が問い詰めると、「実は……。この子は長男の隠し子なの」と衝撃の事実を打ち明けた義母。義兄はもともと子どもの母親に養育費を渡していたそうですが、その母親は「もう1人で子育ては無理」と言って育児を放り投げ、子どもを義兄に押し付けたとのこと。
そして義母は、その子どもを引き取り、義兄の奥さんである義姉に隠し子の世話をさせていたのです……。なんて残酷なことをするのでしょうか。
「元気な5歳児の面倒を見るのって、歳を取った私とお父さんにはとっても大変なのよ」と義母。呆れる私に、「この子の世話をするうちに、長男の嫁の子ども嫌いも治るかと思って!」「正式なわが家の跡取りを産んでくれれば万々歳だわ!」と、義母は信じられない発言を連発。私は思わずため息をつきました。
「このことは夫に話しておきますね。これ以上私たちを面倒ごとに巻き込まないでください」と言って、私は電話を切りました。義母は次男である夫に知られたくなかったようで、慌てふためいてわめいていていましたが、話さないわけにはいきません。
義姉に真実を告知…
2週間後――。
またも義姉から「よくもまた性懲りもなく子どもを押し付けてきたわね!!」と怒りの電話が。「貧乏人は本当に図々しいんだから!」「100万もする花瓶も壊されたし、私が大事に食べていた超幻の限定チョコも食べられちゃったし!!」とヒステリックな叫び声が響き渡ります。
「あんな悪ガキいつまで私たちの高級タワマンに預けるつもり!?」
「いますぐ迎えに来ないと警察に突き出すわ」
「息子は私の実家にいますが」
「え?」
この間の夏休みに、私の実家にしばらく帰省していた私たち一家。息子が田舎暮らしをえらく気に入ってしまい、帰りたくないと騒ぐので、しばらくの間実家に預けているのです。
「で、でも!お義母さんがあなたたち夫婦の子どもだって言ってたし!」と義姉。そこで、私は本当のことを告げることにしました。
「それはお義母さんが嘘をついていただけです」「その子どもはあなたの旦那さんの隠し子ですよ」
図々しいのはどっち?
1時間後――。
義姉から連絡が行ったのでしょう。義母から「なんで全部バラしちゃったのよ!」と怒りの電話がかかってきました。
「次男にも、長男の嫁にも勝手に話すなんて!」「あんたが黙ってさえいればこんな大事にはならなかったのよ!」
東大を出て会社経営をしている長男と、そこそこの大学を出て町工場で働く次男。義母や義兄、義姉が私たちを「貧乏人」呼ばわりして見下していることにはうすうす気付いていましたが、今回のことで確信しました。
義母と義兄は私たち夫婦の名前をかたり、義兄の隠し子を奥さんである義姉に預けていたのです。そんな非常識なこと、私たちを馬鹿にしていないとできるはずがありません
。
「みなさんが私たち夫婦をどう見ているのかがよくわかりました、なので金輪際縁を切らせてもらいます」と言うと、「祖父母や裕福な長男夫婦に頼れなくなってもいいの!?後悔するのはあなたたちよ!」と言い出した義母。
しかし、そもそも義両親や義兄夫婦を当てにしていない私たち。「この度、夫は昇進して工場を任されることになりましたし、収入は飛躍的に上がるので経済的に心配なことはありませんよ」と告げると、義母は焦った様子。
しどろもどろになりながらどうにか絶縁を防ごうとしていましたが、「家族3人で平和に暮らしていきたいので、二度と私たちの前に現れないでください」と言って連絡を絶ちました。
さらに1週間後――。
義母からうちの経済状況を聞いた義姉から、とんでもない連絡が。
「あなたたちがこの隠し子を引き取ればいいのよ!」
実の父親にも引き取ってもらえないなんて……。
夫ともよく話し合い、「隠し子にかかるお金はすべて出す」という誓約書を書いてもらうという条件で、私たちはその子を引き取ることに決めました。
誓約書にサインしてもらった後、「これならお義兄さんの会社がいつ倒産しても安心ですね!」と告げると、義姉はびっくりした様子でした。
義姉に隠れて女遊びを続けていた義兄。あまりの女遊びの激しさから取引先を次々と失い、義兄の会社は傾きつつあるのでした。絶縁をするはずでしたが、長男夫婦がお金を払えないときは義両親たちが負担することも一筆書いてもらっています。
その後――。
私たちは約束通り隠し子を引き取りました。今は家族4人で楽しく暮らしています。最初はいろいろ大変だったけれど、実家に連れて行くと喜んで孫2人と遊んでくれる義両親の姿や子ども2人の成長を見るとうれしくなります。