家族葬を希望していた父
私の父は、高度経済成長期の真っただ中で会社勤めをしていた、絵に描いたような仕事人間でした。定年後は、これまでのキャリアを買われシルバー枠の雇用で勤務していましたが、65歳のときに退職。特に趣味などはありませんでしたが、退職後は母と旅行をしたり、夫婦でのんびりと過ごしていました。
仕事人間だった父ですが、普段から自分の葬儀は家族だけでこぢんまりとおこなって欲しいと希望していました。仕事関係で知り合いは多くいたものの、退職してからは自分のペースで過ごしたいということもあり、仕事関係の人には自分の最期まで関わってもらうのは申し訳ないと話していたのです。
そんな父に、退職後にがんが見つかりました。見つかったときにはすでにステージ4。できるだけの治療はおこないましたが、残念ながら67歳という年齢で亡くなりました。
大きめの会場で家族葬をすることに
父が亡くなり、バタバタの中、葬儀会社と葬儀の打ち合わせをおこないました。葬儀会社にこれまでの父の仕事の話や趣味の話などを伝え、家族葬での葬儀を希望している、親族も入れて20人ほどの参列になるため、香典返しも20セット程度の用意で十分ですということも伝えました。
葬儀会社は、なるべく故人の希望に添えるようにと家族葬の手配を進めてくれることに。しかし、たまたま葬儀場で大きい会場が空いていたため、大きい会場で家族葬をされてはいかがでしょうか? と提案してくれました。私たち家族も、葬儀会社の厚意に甘え、通常の家族葬での会場ではなく、大きい会場で葬儀をしていただくことを了承しました。祭壇は、父のためにも少し豪華なものを選ぶことにしたのです。
生前、父が勤務していた会社には、父が亡くなったことと、家族葬のため会社関係の方の弔問は不要と伝えましたが、会社からお悔やみを贈りたいとのことで、通夜と葬儀の日時は伝えることとなりました。用意された会場は、家族葬とは思えぬ豪華さと広さで、椅子も100脚ほど並べられていました。葬儀会社の方には、こんなに椅子はいらないのでは? と伝えましたが、せっかくなので準備させていただきましたとのことで、葬儀会社の厚意に感激しました。
予想外の数の弔問客に驚き
通夜の準備をしていると、父の会社からの連絡を聞いたという父の知り合いの方が数人、会場に来場していました。家族葬と聞いていたものの、生前大変お世話になったとのことで、わざわざ来ていただいたそうです。しかし、その後も通夜にはひっきりなしに、訃報を聞いたという父の友人や仕事関係の方が訪れ、葬儀の際には200人を超える弔問客が父の葬儀に来場してくれたのです。
親族入れて20人程度と予想していたものの、結果大きい会場にも入りきれないほどの方が弔問に訪れていただき、家族も父の顔の広さや、家族には見せなかった人望の厚さに驚きました。
プロの経験で機転を利かせてくれた
葬儀終了後、葬儀会社の方に、大きい会場を用意していただき、大変助かったと話しました。実は葬儀会社の担当の方は、生前父が勤めていた企業名や仕事内容を聞き、家族葬の範囲では収まらないと予想をし、あえて大きい会場を用意してくださったそうです。
また、香典返しもこちらがオーダーした10倍のセットを念のために準備しておいたところ、すべてなくなり、急きょ追加したということも教えてくれました。これまでの経験を活かし、機転を利かせて父のために素晴らしい葬儀を準備してくれた葬儀会社の方に、家族全員感謝しっぱなしでした。
まとめ
こぢんまりと家族葬をしたいという父の意向とは逆に、多くの弔問客が来場され、結果大きな葬儀となった父の葬儀。これまでの経験から家族葬では収まらないと判断した葬儀のプロの機転でした。結果、父が喜ぶ葬儀ができたねと家族全員が大満足の内容となりました。
また、生前の父の人柄の良さを、葬儀に来ていただいた方からいろいろとお話を聞くことができて、いい葬儀になったと感激。もし自分が最期を迎えるときには、父のように多くの人に見送られるような人生を過ごしていきたいと思った体験談でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
マンガ/山口がたこ
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著者:IWON
小学生の母、夫は現在単身赴任中。会社員とWebライターをしている。高齢出産を経て、体調の変化や疲れなどさまざまなトラブルに直面し、若いころとは違うとつくづく感じる今日このごろ。普段はファッション、推し活、グルメなどの情報収集が趣味。