義母と同じ名字の方が入居して……
義母は比較的早い段階で認知症の薬を飲み始めたこともあってか、進行は緩やかでした。施設の義母は、やさしくプロ意識も高い介護士の職員さんたちにお世話になりながら、とても穏やかに過ごしてきました。
しかしそんなある日、思いもかけなかった事態が発生。いつものように施設に面会に行き、受付で職員さんにあいさつがてら義母の最近の様子を尋ねたところ、「すみません、ちょっと困った事態が起きています」。まさか認知症が重くなったとか、他に何か病気やけがでも……と、おそるおそる話を聞いてみると、思いもかけない返事が返ってきたのです。
「〇田さんがもう1人、入居してこられたんです」。最初は何を言ってるのかわかりませんでしたが、よくよく聞くと、義母と同じ名字の方が最近入居されたとのこと。
それの何が困るんだろうと思ったら、「今までは『〇田さん!』と声をかけたら、あなたのお義母様が『はい!』と振り返って返事をされて、それでよかったんですが、今は〇田さんが2人いらっしゃるので、『〇田さん!』と呼ぶと、お義母様とその方が2人とも『はい!』と振り返られるんです」とのこと。
じゃあ、下の名前で呼べばいいのでは?
「なんだ、そんなことか」と私は拍子抜けしました。「じゃあ下の名前で呼んであげてください」と言うと、職員さんは「それが……」と、また困った顔をしています。「実は……お義母様は△子さんですよね?」、「まさか、義母の他にもう1人△子さんがおられるんですか?」、「そうです」。
私はそれを聞いて思わず吹き出してしまいました。「じゃあ下の名前で呼ぶと、今度は義母と、その別の△子さんが振り返ってしまうんですね」、「おっしゃる通りです」。
フルネームで呼ぶのもNG!?
「それでは、フルネームで呼ぶようにしたらどうですか?」と私は提案しました。すると職員さんは、「それも一応してみたのですが、また新たな問題が……」と。
職員さんが言うには、他の入居者さんから、「皆、名字で呼ばれてるのに、なぜあの人は名字と名前の両方で呼ぶのか?」と、クレームほどではないものの、そのような疑問を投げかけられたりするそうです。不謹慎ながら、これにもちょっと笑ってしまいました。
他にも、この人は名字で呼ぶ、この人はフルネームでといった「呼び分け」が、大勢いる職員の間でなかなか周知徹底されないという問題もあるそうです。
まとめ
義母の名字も名前も比較的ありふれたものです。だから長く施設に入居していれば、いつかは起こりうることだったとも言えます。介護とは直接関係のないことなのに、「職員さんも苦労が絶えないな。大変だな」と同情しつつも、何とか解決策を見つけていただきたいなと思っています。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
文/高井かおる
イラスト/きびのあやとら
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