今年も残りわずかとなり、年末調整のお手続きをされた人もいらっしゃると思います。年末調整にもあった配偶者控除と配偶者特別控除(以下、配偶者(特別)控除)ですが、平成30年に二十数年ぶりに改正があります。この改正がパートの働き方に影響が及ぶご家庭もあると思いますので、3つのポイントをお伝えします。
なお、配偶者(特別)控除は、妻が家計の主体者で夫がパートや専業主夫でも適用されますが、こちらの記事では、会社員の夫と扶養の範囲内で働く妻を想定しています。自営業者や年金生活者は収入の基準が異なりますのでご了承ください。
1.改正の主なポイントは2つあります
①夫の税込年収が1120万円を超えると配偶者(特別)控除の金額が減少します(増税)
②配偶者特別控除の範囲が拡大し、夫の控除額が増える可能性があります(減税)
詳細については下記の表をご確認ください。
【表1】平成30年以降の所得税の配偶者(特別)控除額
【表2】平成29年までの所得税の配偶者(特別)控除額
2.働き方は現状と変えられない人がほとんど
配偶者(特別)控除は、夫の所得税・住民税を軽減するためのものです。しかし、社会保険(健康保険・国民年金)の扶養についての基準の変更はありません。いわゆる、130万円の壁(パート先によっては106万円の壁)は変わっていませんので、健康保険・国民年金を扶養の範囲で考えると、130万円未満または106万円未満で働くことが現実的と思われます。
なお、夫の年収が1120万円以内で妻のパート収入が105万円を超えて130万円以内の場合であれば、夫の配偶者特別控除の額が増えるので、所得税・住民税は減税となります。
3.夫の勤務先から手当のある人は基準の確認をしましょう
配偶者特別控除の拡大で、パート年収103万円以下と130万円以下では控除額が変わらないため、収入を増やそうと思う人もいると思いますが、夫の勤務先で“配偶者手当”“扶養手当”“家族手当”等の手当を受け取っている人は、その基準も確認する必要があります。こちらは法律上の基準がないため、多くの場合は“妻の年収○円以内”、“配偶者控除の適用者”、“社会保険の扶養対象者”が基準になっていますが、それ以外の基準の場合もあります。
たとえば、夫の家族手当の基準が“配偶者控除の適用者”であり、月1万5000円の支給の場合、妻のパートが年収100万円であれば対象となりますが、年収105万円であれば配偶者控除の対象ではなく、配偶者特別控除の対象となりますので(上記表1を参照)、手当の対象外となる可能性もあります。
せっかく妻の年収は5万円増えたのに、夫の手当が年間18万円減ってしまっては家計としてはマイナスです。このようなことがないためにも、夫の手当の有無や支給基準を確認してから、パートでの働き方を考えてみましょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。