©清水茜/講談社・アニプレックス・davidproduction
こんにちは!助産師のREIKOです。3月15日、厚生労働省は、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)の認知拡大と理解促進を目的に、TVアニメ「はたらく細胞」とコラボレーションをおこない、啓発活動を実施すると発表しました。
TVアニメ「はたらく細胞」って?
『はたらく細胞』は、「月刊少年シリウス」(講談社)で清水 茜氏が連載している“体内細胞擬人化漫画”です。コミックスは、累計発行部数150万部を突破し、2018年7月からTVアニメ化も決定しているとのこと。
今回、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)の啓発活動では、『はたらく細胞』の登場人物のひとりである「ヘルパーT細胞」を擬人化したメガネ男子の司令官が、ポスターやリーフレットの中で「HTLV-1を正しく知ってください。」と呼びかけています。
HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)って?
HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)は、血液の中にあるリンパ球に感染するウイルスです。HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)に感染してもほとんどの人が生涯病気を発症しないため、疾患そのものへの関心が持たれにくいという現状があります。
しかし、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)のキャリアはあまり減少しておらず、高齢化に伴い、成人T細胞白血病(ATL)の患者さんが増加しているというデータもあるようです。しかも、この成人T細胞白血病(ATL)の発症には母子感染が関係しているんです。
そのため、産婦人科診療ガイドラインにおいても、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)抗体のスクリーニング検査が強く推奨されるようになりました。
母子感染の感染経路は○○
HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)の感染経路は、約40%が性行為や輸血、約60%が母乳や胎盤、産道を通って来るときの感染です。なかでも、母乳感染が感染経路のほとんどを占めています。そのため、生まれた赤ちゃんに対して完全人工栄養(いわゆる完ミ)が推奨されています。
生後90日未満の期間のみ母乳を与える短期母乳栄養や、一度冷凍した母乳を与える凍結母乳栄養という手段もありますが、検討症例数が少ないため、母子感染予防効果があるのか、明確にはなっていません。
HTLV-1母子感染対策協議会
厚生労働省は妊婦健診における、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)抗体スクリーニング検査を実施するにあたり、①スクリーニング検査体制の整備、②相談・カウンセリング体制の整備、③出生した児のフォローアップ体制の整備、などをおこなうHTLV-1母子感染対策協議会の設置をすすめています。
しかし、設置されている道府県においても、キャリア数の把握やフォローアップの連携体制ができているところはそれぞれ1/3程度であり、現時点ではじゅうぶんに機能している地域が少ないというのが現状のようです。
現在、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)の母子感染予防に有効なワクチンは開発されておらず、経母乳感染を防ぐことが唯一有効な予防法であるといわれています。妊娠を機に「HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)」を知った方もいらっしゃるでしょう。なかには妊娠・出産の経験があっても「なに?それ??」という方もいらっしゃるかもしれません。これを機に、HTLV-1(ヒトT細胞白血球ウイルス1型)のことを知っていただければと思います。
※出典:厚生労働省「HTLV-1母子感染予防対策マニュアル」
著者:助産師 REIKO
医療短期大学専攻科卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。