産後はゆっくりからだを休めたいけれど、なかなかそういうわけにはいかないというのが現状です。疲労やストレスで体調を崩してしまうママも少なくありません。そんな中、増えてきているのが「産後ケア施設」です。
ベビーカレンダーでは、最近注目の産後ケア施設を訪問し、その特徴とこだわりについてインタビューしています。
産後ケア施設レポート第3回は、山梨県笛吹市にある産後ケア施設「健康科学大学 産後ケア事産前産後ケアセンター ママの里」について、センター長である、榊原まゆみ助産師にお話を伺ってきました。
24時間365日、産前産後のお母さんとご家族をサポート
▲施設の設計から携わったという、センター長で助産師の榊原まゆみさん
シンプルで清潔感のある外観の建物の中に入ると、まず目の前に広がるのは間仕切りが取り払われた開放的な多目的スペース。壁や床、インテリアまですべてが真新しくピカピカで、ウッドとグリーンのやさしい配色が初めて訪れた人もホッとさせてくれます。「新しいんですね」とセンター長の榊原さんに話し掛けると、ママの里の成り立ちについてお話ししてくれました。
榊原さん「 ママの里は、平成28年の1月にオープンしたので、ちょうど丸2年経ったところです。以前、県が山梨県のお母さんたちを対象におこなった意識調査の結果、7割の方が宿泊型の産後ケアを望んでいたとのことで、この施設を立ち上げることになったんです。ですから、ママの里はもともと “山梨県産後ケア事業”という県の事業を運営・実施するために作られた施設なんですよ。
今、ママの里では大きく3つの事業をしています。まず1つ目が、産後4カ月までのお母さんと赤ちゃんが宿泊しながら助産師のケアを24時間受けられる事業です。もう1つは24時間対応の電話相談です。これは“山梨県産前産後電話相談”といって、県から委託を受けて、ママの里の職員が24時間対応しています。そして、3つ目は ママの里独自の事業です。たとえばベビーマッサージの教室をひらいたり、母乳の個別ケアを予約制でおこなっていたり、宿泊ではなく日帰りのケアを希望される方への対応をしています。
そして、妊婦さん向けの個別相談や母乳のためのらくらく授乳教室、冷え対策のぽかぽか教室、そのほか、夫婦力アップ講座というのもおこなっています。最近ではおじいちゃん・おばあちゃんの世代に向けた“孫育て講座”も人気ですね。このように、対象は妊娠中から産後まで、あるいはおじいちゃん・おばあちゃんの世代までと、本当に幅広いんです」
▲建物の入り口。シンプルでおしゃれ
▲庭に面した多目的スペースではベビーマッサージや母乳教室が開催されています
山梨県の産後ケアを一手に引き受ける、特殊な運営体制
山梨県は全国的にもめずらしい、県内27市町村が共同して産後ケア事業をおこなうという体制をとっています。その中で、ママの里はどのような役割を担っているのでしょうか。
榊原さん「山梨県の産後ケア事業は、県と県内27市町村が共同体“山梨県産後ケア事業推進委員会”というものを作っているんですね。ママの里は山梨県産後ケア事業推進委員会から委託を受けて運営しているので、山梨県民であれば宿泊にあたり補助金が出ます。
たとえば1泊2食の場合、自費では3万3,900円ですが、補助金が出ると6,100円で宿泊できます。それを高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、産後のお母さんが赤ちゃんと一緒に来て、助産師のケアをつねに受けられる環境としてはそれほど高い金額ではないと思います。なかには自費で利用される県外の方もいらっしゃるくらいです。
ちなみに、ママの里で働いている助産師は今14人いるのですが、みんな山梨県助産師会という団体に所属しています。常勤はセンター長と副センター長の2人だけで、あとは全員非常勤なんですよ。みんな普段は新生児訪問など、地域の仕事をしていて、そこで会ったお母さんがつらそうなときはその場でママの里を紹介できるという利点もあるんですよ」
▲利用するお母さんもスタッフも、みんな和気あいあいだといいます
▲中医薬膳栄養指導師のスタッフによる薬膳教室では季節により自家栽培の野菜をつかうことも
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