突然倒れて入院した父。病状は悪くなる一方で、私と間違えて夫に電話をかけてしまい、そこで資産について話してしまったようなのです。
「お前の親父さん、駅前のビルとマンションを持っているらしいじゃないか!」「実家もやけに大豪邸だし、実は前からお前の実家は金持ちじゃないかと思ってたんだよ!」と大興奮の夫。
夫はこのことを義両親にも話をしたようで……?
浮かれる義両親と夫たち
連日、遺産相続について話をしてくる夫と義両親。すでに母は亡くなっているため、父の遺産はまるごと一人娘の私が相続すると思っているようです。
「遺産相続したら、まずはハワイ旅行ね!」「いやいや、外車もほしいぞ」「もう働く必要もないか!」
父はまだ生きているというのに……。まるで父の死を待ち望んでいるかのような夫と義両親の言動に、私はショックを受けながらも「わが家のことはわが家でやりますので、口を出さないでください」と繰り返すしかないのでした。
義両親と夫の勘違い
3カ月後――。
治療の甲斐もむなしく、父は亡くなりました。しかし、その葬儀の場でも夫と義両親は不謹慎な発言を繰り返していたのです。
「駅前のビルはいくらで売れるのかしら」「ハワイに行くならファーストクラスよね!」「いやいや、プライベートジェットを買おう」
私がいくら怒っても、「かわいい娘とその家族のために財産を残せて、親父さんだって喜んでるさ」と流される始末。
さらに、夫にいたっては「俺も、母さんも父さんも仕事辞めたんだよね」「億万長者の勝ち組になったわけだし、もう働く必要ないと思ってさ」と、退職を事後報告。
「いや~ついにあの豪邸に住めるなんて最高だぜ!」
「資産家のおまえと結婚した俺って本当にラッキー!」
「え?無理だよ?」
「は?」
夫や義両親はすぐにでも私の実家に引っ越す算段を立てていたようですが、それは無理な話なのです。なぜなら、すでに売却手続きを済ませてあるのですから。
欲望にまみれた義両親と夫の末路
もともと動物好きだった父と母。父は自分がもう長くないと悟ったときから、実家をはじめ、遺産の大半は保護犬や保護猫活動をしている慈善団体に寄付しました。私はその手続きを父の代理でおこなっていたのです。
父は残りの半分の遺産を私に遺すつもりだったようですが、私は受け取りを拒否。夫や義両親の態度がひどすぎたことと、また、動物好きの父の気持ちに添いたいという思いもあり、私に遺す予定だった分も寄付してほしいと父に伝えたのです。そのため、私が受け取った遺産は本当にごくわずか。引っ越し代にもならないかもしれません。
「なんでそんな大事なことを黙っていたんだ!」と夫から怒鳴られましたが、父の資産は父のものであり、使い道について夫や義両親に口出しされる筋合いはありません。だからこそ、私はずっと「勝手に話を進めないでください」と口を酸っぱくして夫や義両親に言っていたのです。
「うちの実家も、売却手続きしたんだ!これから俺たちのマンションで、4人で暮らさなきゃならなくなるんだぞ!?」と怒る夫に、私は「4人じゃなくて3人です」「だって、私はあなたと離婚して出ていくもの」と淡々と告げました。
父の遺産のことばかり考えて、父の葬儀さえもけがした夫と義両親。私は、この夫と義両親との縁を切ろうと決めていたのです。
「私はもう家には戻りません」「離婚については、弁護士から連絡します」とだけ伝え、呆然とする夫を残してその場を去りました。
その後――。
私は弁護士を通じて、夫と離婚しました。
父の遺産をあてにして、ハワイ旅行や外車などをすでに予約していた元夫と元義両親。前払い金は返金不可、そしてキャンセル料も発生し、にっちもさっちもいかない状況に陥ったそう。近所の人によると、夜逃げ同然でいなくなってしまったそうです。
私は相変わらず仕事を続け、つつましく暮らしています。わずかではありますが、受け取った貴重な父の遺産は、いざというときのために取っておこうと思っています。
【取材時期:2024年9月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。