2017年版の自殺対策白書によると、日本では、平成10年以降3万人を超えていた自殺者が平成24年に3万人を切り、年々減少傾向にあるということです。自殺者が減少傾向にあるなかで、気になる研究結果が発表されました。
国立成育医療研究センターによる研究とは?
国立成育医療研究センターでは、2015年1月1日から2016年12月31日の日本の人口動態統計のデータをもとに12~60歳女性の死亡データを作成し、そのなかから妊娠中・産後1年未満の女性の死亡に関して検討をおこないました。
その結果、自殺や妊産婦死亡とされていなかったが死因が妊娠と関連している可能性があるかもしれない症例など、同年(2015年~2016年)の公式統計には含まれていない死亡例が見つかったということです。そして自殺の症例のうち、赤ちゃんを産んだあと1年未満の症例に注目したところ、35歳以上、初産婦、および仕事をしている者のいない世帯の産褥婦(さんじょくふ)において自殺率が高かったとのことでした。
自殺の原因は?
今回、国立成育医療研究センターがおこなった研究では、自殺の原因までは明らかにされていません。ですが、2015年におこなわれた日本産婦人科学会の報告によると、2005~2014年の間に東京23区で63人の妊産婦さんが自殺によって亡くなっていました。これは、産後の出血が原因で亡くなった方の約2倍ということです。そして、自殺によって亡くなった人のうちの40人が「産後1年未満」で、その6割がうつ病や統合失調症などの精神疾患での通院歴がありました。さらにその半数の方が「産後うつ」だったとのことです。
現在では妊産褥婦の自殺に関する研究やママたちのメンタルサポートへの取り組みなどが多数おこなわれており、さらなる実態を知るために2017年には死亡診断書の記入方法も改正されたそうです。
9月10日~16日は自殺予防週間
厚生労働省は、9月10日~16日の期間を自殺予防週間としています。自殺予防週間は、”自殺”というのは決して他人事ではなく自分の身にも降りかかる可能性のある問題であり、命の危機に直面したときには誰かの助けを求めるという認識や自殺対策における国民一人ひとりの役割などについての意識が共有されるよう、幅広く国民一人ひとりに対して呼び掛けをおこなうというものです。
今年のキーワードは「ゲートキーパー」です。「ゲートキーパー」とは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことで、言わば「命の門番」とも位置付けられる人のことです。(厚生労働省HPより引用)
「ゲートキーパー」は専門家の仕事?
今回初めて「ゲートキーパー」という言葉や役割をきいて、これは専門家の役割……と思うかもしれません。しかし、「ゲートキーパー」というのは決して専門家だけの役割ではないのです。自分の周りに命の危機に直面している人がいるかもしれないという意識を持ち、自分なりに行動することで救われる命があるかもしれません。
自殺予防対策の有効な手段は、孤立・孤独を防ぐことといわれています。最近は、核家族化、近隣住民との関係の希薄化、ワンオペ育児など、昔に比べてママが孤独になりやすい環境にあるといえます。自分の周りに気になる人がいるけれど、勘違いだったらどうしよう。余計なお世話って言われたら……となかなか行動に移せないという方もいらっしゃるでしょう。直接、関わらなくても誰かに相談する、SNSなどで何か情報を提供するなど、いろいろ手段があるのではないかと思います。
ベビーカレンダーも、今まさに子育てに奮闘しているママたちだけでなく、これからママになろうとしている方たちの「ゲートキーパー」になれたらと思います。
※参考:国立成育医療研究センター「妊産褥婦の自殺にかかる状況および社会的背景の調査を開始」〈 https://www.ncchd.go.jp/press/2017/maternal-deaths.html 〉「人口動態統計(死亡・出生・死産)から見る妊娠中・産後の死亡の現状」〈 https://www.ncchd.go.jp/press/2018/maternal-deaths.html 〉、厚生労働省「平成30年度『自殺予防週間』実施要綱」〈 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000349380.pdf 〉「平成30年度『自殺予防週間』広報ポスター」〈 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000349381.pdf 〉