その同級生は、高校時代に私の彼氏を奪った張本人。まさか会社で出会うとは思っていなかったのか、ものすごく驚いていました。
過去のこともあり、足早に用事を済ませてその場を離れた私。しかし、すぐに彼女から「なんであんたなんかがうちの取引先にいるのよ!」と電話がかかってきたのです……。
再びの略奪宣言
「実は昨年、私結婚したんだよね」「そして、結婚相手はその会社の社長なの」「今日は夫が大事な書類を忘れたって連絡があったから、持ってきただけ」と言った私。
すると、「な、なんで、あんたがうちの会社の大事な取引先の社長と……!」「高校時代に私に彼氏を奪われてピーピー泣いてたくせに!」となぜか怒り出した彼女。私だってあれから成長して、いろんな男の人がいることを知ったのです。それに、高校時代の元彼のことは過去のこと。今さら彼女に何を言われようと、痛くも痒くもありません。
私が淡々と返事をしていると、「じゃあ、過去のことじゃなくて、これからのことならどうかしら?」と言い出した彼女。
「彼氏の次は旦那を奪ったらどうなるのかしら?」「そしたら、今度こそあんたの人生は終わりね」「よし、私決めたわ!あんたから旦那を奪う!」
はっきりと略奪宣言をするとは思わず、私はびっくり。「ほ、本気で言ってるの……?」と言うと、「もちろんよ!あんたが社長夫人になれるくらいなんだもの、私なら余裕でしょ!」と彼女は謎の自信を見せるのでした。
頭痛の種
その夜――。
「今日、会社で誰かと話してたんだよね?」「知り合いだったみたい、って受付の子が言ってたよ」とネクタイを緩めながら、夫が話しかけてきました。
「うん……知り合いっていうか、高校時代の同級生なんだけど……」「あなたの会社と取引しているところで働いているんだって……」と歯切れの悪い私。
「それは素敵な偶然だね」「積もる話もあったんじゃない?今度2人でゆっくりごはんでも食べてきたら?」と言う夫に、「そういうのはいいの……。むしろ、もう二度と会いたくない」と本心を打ち明けました。
高校時代の略奪から、今日の略奪宣言まで、洗いざらい夫に話した私。話を聞いた夫もしばらく絶句していました。
「既婚者の男に手を出すっていうのもアレだけど、まさか取引先の社長に手を出そうとするなんて……。仕事での支障とかは考えられないんだろうか……」と言う夫に、「そんなの考えられる人なら、略奪宣言なんて非常識なことしないでしょ……」と返した私。
「こっちが自衛するしかないのか」と言う夫に、私は力強く何度もうなずいたのでした。
略奪女の敗北
略奪宣言から1カ月後――。
「あんたの社長旦那はついにこの私がもらったわ~!」「あんたは今すぐ離婚届を用意してきなさい!」と、例の同級生から連絡が。
「やっぱり社長ほどの男だと、私の価値の高さがすぐにわかるのかしらね?」「もうあんたの旦那は私に夢中なの、その証拠に今夜は私を素敵なディナーに招待してくれてるんだから!」
彼女は夫に対して、私的なメールを何通も送っていたそう。しかし、夫からは一向に返信が来ず……。業を煮やした彼女はなんと夫の会社に突撃して、夫をエレベーターに閉じ込めて直談判したのだそう!
前々からヤバい人だとは思っていましたが、これにはドン引きでした……。
「社長の旦那さん、奪ってごめんねw」
「今夜は素敵なディナーに招待してくれてるの。今待ち合わせ場所に向かってるのよ♡」
「夫なら隣で爆笑してるけど?」
「え?」
おなかを抱えて、笑い転げている夫。私は自分のスマホをそのまま夫に渡しました。
「僕は君と食事するなんて一言も言ってないよ!」「夜景が見えるところを用意しておくとは言ったけど、レストランを予約しておくなんて言ってない」「君はそのまま夜景の見える会社の会議室行き決定だから!ちなみに待ち合わせの相手は君の上司だよ!」
私の同級生にエレベーターに閉じ込められた夫は、対策を考えたのだそう。こっそりと彼女の言動を録画し、今まで送られてきた迷惑メールすべてとあわせて、彼女の上司に連絡したとのことでした。
「そ、そんな……!恋愛はプライベートなのに!会社は関係ないのに!」「冷静になってください!そんなやつより、私のほうが社長夫人にふさわしいでしょ?」と言う彼女。
すると、夫は笑うのをやめ、真顔で「冷静になるのは君のほうじゃない?」「よく一度捨てた男を何食わぬ顔で狙えるよね」「僕、君に高校時代捨てられた元カレなんだけど」と言いました。
高校時代、私の彼氏を略奪する前に、彼女と付き合っていたのが私の夫だったのです。夫は一方的に彼女に振られ、すごく傷ついたのだそう。無理もありません。
「あのときのショックで、僕は勉強が手につかなくて、大学にも落ちて……」「でも浪人して、必死に勉強して希望の大学に入ったんだ」「大学時代に会社を立ち上げて、ここまで大きくできたから、ある意味君にも感謝してるよ」
そして夫は、「でもこれ以上感謝することはないから、消えてくれないかな」と続けたのでした。
その後――。
勤務時間内に、会社のメールで私的に交際を迫っていたことが問題になり、結局彼女は会社をクビになったそうです。周りから後ろ指を指されるようになった彼女は、実家に逃げ帰ったと聞いています。
夫と私は、お互いに苦しい恋愛経験を乗り越えたからこそ、今幸せな夫婦生活が送れているのかもしれません。夫に愛してもらえることを当然と思わず、日ごろから感謝の気持ちを持って、夫を支えていきたいと思っています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。