「深夜まで教室の準備をして、朝も早く起きて……それで家事も完璧にこなしてくれるのが申し訳なくて」「俺ももっと仕事に専念したいから、一時的に別居してみないか?」と言ってきた夫。
「それはさみしいな……」とこぼした私に、夫は繰り返し「でも、これで2人がより成長できればお互いにとっていいことだろ?」「がんばってガンガン稼いで、お前の夢でもある自宅兼教室を実現させようぜ!」と言ってきました。
あまりの熱意にうなずくと、夫は「実はもう、1駅離れたところでマンションを見つけてあるんだ」「俺は今週中に引っ越すからな」と言い出したのです。そして、そのまま本当に夫は隣駅のマンションに引っ越してしまいました。
姪からの確認
夫と別居して3カ月――。
珍しく、姪から電話がありました。ご両親が共働きで忙しかった関係で、うちによく預けられていた彼女。私と姉妹のように育った子です。今は市役所で働いています。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん?私に何か言うことない?私に伝えなきゃいけないこと、あるよね~?」と言ってきた姪。ニヤニヤしている顔が目に浮かびました。
しかし、私は姪に伝えることなんてありません。料理教室の運営がうまくいっていることはすでに伝えてあるし……。
「ついさっき、旦那さんが役所に来たんだよね」と、姪。そう言われても、私には思い当たる節がまったくないのです。さすがの姪も、私の鈍い反応になんだか不安になったようでした。
「旦那さんが出生届を出しにきたから……、お姉ちゃん、子ども産まれたのかなって……?」と姪。しかし、私は妊娠も出産もしていません。
私は頭が真っ白になりながら、夫と別居した経緯と、妊娠も出産もしていないことを姪に話しました。
「じゃ、じゃあ、お姉ちゃんの旦那さんは、別居を口実に浮気してた……いや、浮気して子どもができたからお姉ちゃんと別居したってこと!?」と驚く姪。
私も、まさか別居の本当の理由が"隠し子"だったとは思いませんでした。それに、相手の子どもの出生届を自ら提出しに行くあたり、かなり本気なのでしょう。
「ご、ごめんね!私、勝手に勘違いして、浮かれて連絡して……」「私が言えることでもないけど、お姉ちゃん、大丈夫?こんなの悲しいよね」と、涙声で言ってきた姪。しかし、私は一瞬ショックを受けたものの、案外スッキリしていました。どこかで夫の別居理由に不信感を持っていたのでしょう。
「ありがとうね、でも平気なの」「とりあえずサクッと夫と相手の情報を調べて、とっとと離婚しちゃおうかな!」と言うと、姪は「私、どんなことがあってもお姉ちゃんの味方だからね!」と力強く言ってくれたのでした。
友人の勤務態度
数日後――。
「お仕事お疲れ様!」「最近お互いに忙しくて、全然連絡できてなかったよね?大丈夫?ちゃんとごはん食べてる?」と、夫に連絡した私。
すぐに夫は「心配ありがとう、慣れないことも多いけど、一人暮らしもいいもんだな」と返信してきました。
「私もありがたいことに仕事に打ち込めてるけど……なんだか顔を合わせて話がしたくなって」「今からそっちに行ってもいいかな?」「夫婦だからとくに連絡する必要もないかと思ったんだけど、念のため連絡したの」
「今日は仕事の資料が散らばってて!今日はダメだ!明日までには部屋もきれいにしておくし、明日ならいいから!今日だけは絶対ダメだ!」
「さみしいなら、今から俺がそっちに行くから!」
「そんなの悪いよ。それに私、もうあなたのマンションの前にいるし」
私は笑いをかみころしながらそう言いました。
「というわけで、開けてくれる?」「浮気相手と好きなだけ過ごした部屋、見せてよ」「実は私、教室で余ったお料理持ってきたの!もしよかったら3人でごはん食べながらゆっくり話しましょう?」
くだらない理由で浮気した男の末路
夫は私が成功していく様子が悔しくて、憂さ晴らしのように浮気を始めたとのことでした。私の年収が夫より高くなったことも気に食わなかったんだとか。そこで結果を出して昇進を目指すか、転職を検討するかすればいいのに、どうして浮気に走ったんだか……呆れて言葉も出ませんでした。
「離婚もするし、慰謝料も支払ってもらいますからね」と言うと、夫は「俺たちには生まれたばかりの子どもがいるんだぞ!?これからお金がかかるのに……」となぜか被害者面。
「赤ちゃんは夜泣きがひどいし、彼女は家事も育児もテキトーだし……。そうだ、いっそのこと、この子とお前と俺と3人で暮らすっていうのはどうだ?」「お前もいい歳だし、子どもほしいだろ?」とまで言い出す始末。
復縁も無理ですし、浮気相手の子どもを育てるのも無理です。夫のあまりに稚拙な考えに、私は呆れ果てていました。
「浮気相手との結婚生活も子どもの世話も嫌なら、また別居を提案して養育費だけ支払えばいいじゃない」「その覚悟もないくせに、ギャーギャー文句ばかり言って、ラクなほうに逃げようとするんじゃないわよ!」「わかったら、もう二度と連絡してこないで!」
その後――。
私と元夫は離婚。元夫は浮気相手に迫られてすぐに再婚したそうですが、育児も家事も押し付けられ、仕事でミスを多発し、窓際族になっていると共通の友人から聞きました。
私は慰謝料を元手に自宅兼料理教室を建てました。さらに仕事に打ち込んだ結果、SNSのフォロワー数だけでなく教室の生徒も増えました。
離婚のきっかけをくれた姪には、感謝の気持ちでいっぱいです。そんな姪は「彼氏ができたから、お料理教えて!」と言って、私の教室に通うように。料理の面でしかサポートはできませんが、姪の恋愛がうまくいくように心を込めて指導しています。
【取材時期:2024年12月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。