親不孝者と連呼する母親
ある日、母から45Lのビニール袋にパンパンに入った黄ばんだ布を渡されました。「なに、これ?」と尋ねると、私が使っていた布おむつだというのです。20年以上前の布おむつなんて、衛生的にも使えるはずがありません。「紙おむつを使うからいらないよ」と伝えると、「なんでよ、もったいない! 使いなさいよ!」と怒鳴られました。その後も、母は私が使っていた古いプラスチック製のゆりかごやベビーカーなどを渡してきます。毎回「使いなさいって言ってるでしょ!? 親不孝なんだから!」と怒鳴られながらも、丁寧に断っていました。
そんな中、妊娠後期に入ったある日、「里帰りはしないの?」と聞いてきた母。私が「夫と2人で育児を始めたいから、里帰りはしないよ」と伝えると、意外にも怒鳴られませんでした。
ところが後日、母から家に大きな荷物が送られてきました。中身は、大人用の布団一式。電話をすると、母は「うちに里帰りしないなら、あなたの家に泊まって手伝うわ!」と大はしゃぎ。わが家には普段使わない布団を置く場所はなく、そもそも母に手伝いも頼んでいません。「夫も育休を取ってくれるし、泊まり込みでの手伝いは必要ないよ」と断ると、電話口で「この親不孝者!」とまた怒鳴られてしまいました。その言葉に「私はそんなに親不孝なことをしているのか……?」と悩む日々が続き、妊娠後期にも関わらず体重が減ってしまったのです。出産前にこれはダメだと感じた私は、母とは距離を置くことにし、最低限の連絡は夫にお願いしました。
母と連絡を取らないまま2カ月ほどが経ち、無事に出産した私。入院中はゆっくり休むため母に会いたくなかった私は、事前に夫にお願いして母の面会を断ってもらっていました。しかし出産から1時間後、病院に母から電話があったと助産師さんから伝えられたのです。母はこっそりと病院に面会の詳細を問い合わせていました。事情を知っていた病院側は、「ご家族に聞いてください」と断ってくれたそうです。
病院にも迷惑をかけてしまった……と落ち込んでしまった私。「親不孝なんですかね……」と今までの母との一連のやりとりなど事情を話すと、助産師さんは「落ち込まなくていいわよ! 今はあなたがしたいようにすればいいの。親孝行は元気に子育てしてこそできるんだから! 自分を守ることは、子どもも守ることにも繋がるし、間違ってないよ」と励ましてくれました。この言葉で私の母に対する気持ちに区切りがついたのです。結局、母が病院に突撃してくることはありませんでした。
退院後、夫と2人で育児に奮闘し、平穏な生活を送っています。母とはお宮参りのときに子どもの顔を見せて以来、距離を置いたまま……。今は穏やかな気持ちで日々を過ごせているので、これでよかったと思っています。間違っていないと背中を押してくれた助産師さんのおかげで、私自身が心身ともに元気でいることは、子どもや夫のためにも大切なことだと気づいた出来事です。
著者:坂井みさき/20代・ライター。絵本とお絵描きが好きな、1歳の自己主張強めな女の子を育てるママ。日々の楽しみは、娘を寝かしつけたあとで夫と甘い物を食べながらテレビを見ること。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2024年12月)
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