こんにちは! 助産師のREIKOです。妊娠中期以降はとくに注意が必要な妊娠高血圧症候群。前回は妊娠高血圧症候群の基礎的なことについてお話ししました。今回は、妊娠高血圧症候群がママや赤ちゃんに及ぼす影響や治療についてお話ししていきたいと思います。
妊娠高血圧症候群の症状・合併症【ママ編】
妊娠高血圧症候群の診断基準の1つである高血圧ですが、高血圧に伴う症状として、頭痛や耳鳴り、めまい、動悸などが挙げられます。重症になると血圧上昇、蛋白尿に加えて、以下のような合併症を生じることがあります。
◆腎機能障害
尿量が少なくなったり、むくみが強くなったりします。
◆肺水腫
肺に水がたまり、呼吸が苦しくなります。
◆子癇(しかん)発作・脳出血
子癇発作では、頭痛や目がちかちかするなどの症状からけいれん発作を起こします。一時的に呼吸が止まり、意識を失いますがその後は回復します。しかし、けいれん発作が何度も続く場合は命の危険性も。ママも呼吸が止まると赤ちゃんに酸素が行かなくなるので、赤ちゃんも苦しい状態に陥ります。脳出血も子癇発作同様、ママと赤ちゃんにとって危険な状態です。
◆常位胎盤早期剥離
赤ちゃんが生まれる前に突然胎盤が剥がれてきてしまいます。そうすると赤ちゃんに酸素が届かなくなってしまうので、赤ちゃんが危険な状態に陥ります。ママの出血も多くなります。
◆HELLP症候群
みぞおちのあたりの痛み、だるさ、吐き気などの症状が見られ、血液データに異常がみられます。HELLP症候群から子癇発作や常位胎盤早期剥離、肺水腫などの合併症が起きる頻度が高くなります。
◆DIC(播種性血管内凝固症候群/はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん)
もともとある血管の中の血液を固まらせないようにする働きが制御できなくなり、全身で出血しやすい、出血が止まらない状態になってしまいます。常位胎盤早期剥離の治療が遅れるとDICを起こす恐れが大きくなります。
妊娠高血圧症候群になると……【赤ちゃん編】
妊娠高血圧症候群はママだけでなく、赤ちゃんにも影響を及ぼします。
◆胎児発育不全(FGR)
赤ちゃんの発育がおなかの中にいる週数より遅れてしまいます。
◆胎児機能不全
胎児機能不全というのは、たとえば、胎児モニタリングで赤ちゃんに元気がない、苦しいサインが出ているなど、おなかの中の赤ちゃんの健康に問題がある、あるいは将来問題が生じるかもしれないと判断された状態をいいます。
妊娠高血圧症候群の治療【外来通院編】
妊娠高血圧症候群の程度により、外来通院で経過を見ていくケースがあります。その際、通常の妊婦健診の間隔より短い間隔で通院するようになることもあり、ママと赤ちゃんの状態を注意深く診ていくようになります。
妊娠高血圧症候群の治療は、安静と食事療法、可能であればお家での血圧測定などがおこなわれます。安静は静かな環境で休息すること、食事はカロリー制限とともに塩分制限が必要になります。塩分制限は妊娠高血圧症候群の予防のためには1日10g以下、治療のためには7~8g程度。極端なカロリー制限や減塩はかえってよくないといわれています。
場合によっては、血圧を下げるお薬が処方されることもあります。
妊娠高血圧症候群の治療【入院編】
血圧のコントロールが難しかったり、赤ちゃんの成長が伸びないなど、外来通院での治療だけでは難しいと判断された場合、入院治療が必要になります。
入院後の治療についてですが、これからお話しするのは私が働いていた病院での一例です。
治療の基本は外来のときと変わらず、安静と食事療法、血圧コントロールになります。血圧コントロールに関しては内服を続ける場合もありますが、24時間の点滴をおこなうこともあります。重症の妊娠高血圧症候群の場合は、光も刺激になってしまうので、テレビもお部屋の電気も消して、カーテンも閉めて……というような環境で安静にしていただいていました。
妊娠高血圧症候群の悪化や合併症が生じていないかを確認するために、血液や尿検査など定期的におこなわれます。また、赤ちゃんに対しても、胎児モニタリングや超音波を定期的におこなって赤ちゃんが元気かどうか確認していきます。
このようにして、ママと赤ちゃんの状態を見ながらお産のタイミングを図っていきます。妊娠高血圧症候群の場合、お産はどうなるの? と思っている方もいらっしゃると思います。お産の方法とお産後については、次回お話ししていきたいと思います。