はじめまして。保育士おとーちゃんこと須賀義一と申します。
僕は元々保育士で、現在は子育てがムリなく送れるための情報を発信したり、保育施設の監修や保育士の研修などをしています。このたびベビーカレンダーさんで、主に小さいお子さんの子育てについてのコラムを連載していくことになりました。
僕は、「子どものために○○をするのが正しい子育てです」とか、「親として愛情をもって頑張りなさい」といったことで子育てを伝えようとは思っていません。むしろ、そういう世間の見方が子育てする当事者を苦しめていることを知っています。子育てする人も、子どももみなそれぞれが違います。何が正しいなどと一概に言えるものではありません。
僕が目指すのは、子育てする人一人ひとりがムリのない子育てを送ってもらうことです。そのために、子育てのいろいろなシーンでの気づきをお届けすることで、しんどい子育てからラクな子育てにソフトランディングしてもらいたいと思います。
これを知っているか知らないかで人生が変わる? 子育ての最初の目標とは
こちらのベビーカレンダーさんの読者の方には、妊娠中の方や小さいお子さんをお持ちの方が多いそうですね。そこでこれから子育てをして行くにあたって、ぜひ頭の片隅に置いておいてもらいたいことをお伝えします。
それは、「子育ての目指す方向・最初の目標ってなんだろう?」というものです。まあもっとも、一番大切なのは健康なので、その次くらいにくることかな。これを知っているか知らないかで、人によっては人生が変わります。
それは、子育てで目指すところの最初の目標は「かわいい子にする」ことであるということです。これだけだとわからないと思うので少し解説しますね。
子どもが〇〇できるようにすることを目標にしないで!
ほとんどの人が、子どもに関わった経験などあまりないまま親になると思います。おそらく不安や心配がたくさんあることでしょう。そういう気持ちでいるところにたくさんの子育ての情報が流れ込んできます。
不安や心配があればあるほど、何か目に見える結果を出すことに心はとらわれてしまいます。その結果、「これが正しい子育てです」「こうすれば○○できる子に育ちます」というところに目が行き、それを子どもにしようとしたり、習得させようとします。端的に言うと、多くの人が「これが子育て」と思ってしまうほとんどのことは、「子どもを○○できるようにすること」です。
例えば小さい子だと、
・人見知りしないように
・おむつがとれるように
・食べ物の好き嫌いをしないように
・友だちとじょうずに遊べるように
・物の貸し借りができるように
・喧嘩をしないように
このようなさまざまな「○○できること」を子どもに課すことが子育ての目標のように見えてしまいます。
こういった「○○できる」にとらわれると、実際の子育ては、注意やダメ出し、過保護や過干渉ばかりになっていきます。また、そこには子どもからすると自分が否定的に見られているという感覚がつきまといます。そのような関わりは子どもからすると気持ちのいいものではないので、かえって親はそこからの大変さを受け取ることになります。だから、子育てを頑張れば頑張るほどしんどくなる悪循環にはまります。少なくない人がこういった子育ての日常ゆえに、3歳ごろまでに子どもに向き合うことにヘトヘトになってしまうのが、現在の一般的な日本の子育てになってしまっています。
いまの日本の子育てでは「正しい子どもの姿」といったものばかりが追い求められているので、一番最初に必要なことが見過ごされています。
子育てで最初に必要なこととは…
子どもを「かわいい子にする」ことです。「できる子にするのではなく、かわいい子にする」と覚えておいてください。さまざまな「○○できる」は、実は「ついてくるもの」なのです。かわいい子を目指しておけば、あとは勝手についてきます。
なぜなら、「かわいい子」とは自己肯定感を持っており、大人を信頼しており、ものごとへの意欲がある状態だからです。「自己肯定感を高めるためにはどうすれば?」「大人を信頼するようにするためにはどうすれば?」「意欲をたくさん持った子にするにはどうすれば?」と難しく考えることはありません。
なお「かわいい子」の姿って? と思う方もいると思いますが、ここでの「かわいい子」という言葉は、「○○できる子」という多くの人が無意識に子育ての念頭に置いてしまうことへの対比の表現として使っているにすぎません。どういう子どもの状態を「かわいい」と感じるかは、感覚的なものなので人それぞれなことと思いますが、そのように理解していただけたらと思います。
そして、かわいい子にするにはかわいがればいいのです。子育てを、たくさんの「○○できる」を子どもに獲得させようとする複雑なところから、「かわいがってかわいい子にしよう」というシンプルなものにしておきましょう。ではかわいがるってどんなことなのでしょうか? 次の章で解説しますね。
かわいがるってどういうこと? 何をすればいいの? 気を付けることは?
かわいがることでかわいい子にすると先ほどお伝えしました。
かわいがるというのは、
●スキンシップをとる
抱きしめたり、頭をなでたり、髪をとかしてあげたり、手をつないだり、体をさすってあげるなどです。
●共感の言葉を伝える
例)「おいしいね~」「楽しいね~」「きれいだね~」「うれしいね~」「悲しいね~」など
●肯定の言葉を伝える
例)「あなたのこと大好きよ」「あなたがいてくれてうれしいわ」「一緒にいると楽しいよ」
●あたたかく見守る、あたたかな目線を送る
「○○できる」を念頭に置いて子育てしていると、子どもの姿のあれこれをその「○○できる」ことと引き比べて見てしまいます。すると、大人から子どもへ向けられる視線は、うんざりした気持ちや、ハラハラした気持ち、イライラした気持ちなどのネガティブなものに自然となってしまいがちです。
「○○できるようになってほしい」といった大人の気持ちを、完全になくすところまではいかずとも、その気持ちにちょっとブレーキがかかるだけで大人から子どもへ向けられる視線は、やわらかなもの、おおらかなものといった肯定的なものになることでしょう。それがあたたかな見守りです。
このことは知らないと見過ごされがちですが、子どもにとってはこの大人からの目線のあり方がとても大きな影響を与えます。僕は、これこそが子どもが感じ取る肯定の基礎だと考えています。
大人もムリをしないで
もう一つ大切なことは先ほど述べたかわいがるということを自分に嘘のない形ですることです。自分に嘘というのは、それらをムリしてやったり、イライラしながらしたり、自己犠牲しながらしたりすること。子どもの姿を正しくするために、それらを「自己犠牲してでもやらなければ」と思ってしまうと、それでいくら頑張ってもなかなかうまくいかないものです。
できないときは「できない」で構わないし、疲れちゃったときは「疲れちゃったからムリ」と言って構いません。それらを大人も正直に出すことで、嘘のない関わり、メリハリのある関わりにしたほうが子育ては安定します。またどうしても自分ができない状況であれば、それを誰かに肩代わりしてもらっても構いません。自己犠牲せずムリなくできる範囲でいいから、かわいがることを子育ての最初の目標にしておいてください。
まとめ
すべての「○○できる」はそのあとに全部がついてくることに過ぎません。また、それらの早い遅いは子どもの成長の長い期間から考えたら、小さな誤差に過ぎません。
このことを子育ての最初の段階で知っておくだけで、人によっては本当に子どもも大人も人生が変わる場合があります。もし、この記事を読んでくださっている方にそれなりの年齢のお子さんがいて、子どもの姿の大変さなどの子育ての困難にぶつかってしまっている場合、すべてのできるできないは一旦置いて、もう一度かわいがることから関わってみてください。子育ては、いつであっても遅いということはありません。
どうぞ、ムリのない子育てを目指してみてください。