病人の声がなかなか聞こえない
家族で自宅介護をしていて大変だったことはたくさんありますが、一番問題だなと思ったのは、病人の声が届かないということでした。介護ベッドの上の父が、何か用があって母を呼んでも、声もほとんど出せず、音を立てる体力もないため、誰にも気づかれない状態になることが何度もありました。
介護ベッドは1階の部屋に置いてあったのですが、同じフロアの別の部屋にいても父の声はまったく聞こえません。声を出して叫んでいる父もそのたびに体力を削られました。それ以降、母が近くにいるか、または物音を立てずに1階の別の部屋にいることになったのですが、あまりにも負担が大きく、眠ることもほとんどできなくなったため、母の体力も限界に近づいてしまいました。そこで、私は父のベッド周りの環境を見直してみることにしました。
自宅介護の必須アイテム「呼び出しチャイム」
いろいろやってみましたが、一番役に立ったのは「呼び出しチャイム」の導入です。呼び出しチャイムは、本来、後付け可能な玄関用のチャイムです。本体と子機がセットになっていて、本体のボタンを押すと子機からチャイム音が流れます。子機は、壁のコンセントに挿しておけばすぐに使え、電池はいりません。わが家では、子機を追加で1台購入して、1階のリビングと2階の廊下のコンセントに挿し、一番大音量でチャイムが鳴るように設定しました。
病人は指で押す力も弱く、いちいちボタンを探すのも大変なので、介護ベッドのフレームにパスケースに付いているような伸縮性のある長いリールを結び、その先に呼び出しボタンを取り付けて、父の手元に置くようにしました。これなら、父もすぐに押すことができ、もし落としてしまってもすぐに引き上げることができます。これで、父がベッドでボタンを押すと家中にチャイム音が鳴り、近くに誰もいなくても、誰かが必ず気づくという環境ができました。
介護する側も、される側もラクに
チャイムを導入して、家の環境は大きく変わりました。誰かが四六時中父の近くにいる必要がなくなり、夜は、誰か1人が起きていればよくなり、母も毎日きちんと眠ることができるようになりました。介護される側の父も、誰かを呼びたいときにすぐに来てもらえるようになったため、体力の消耗も減り、体調も安定しました。チャイム1つでここまで変わるのかといったくらいの変化で、本当に導入してよかったと思えたものの1つです。
まとめ
介護は想像以上に過酷な環境です。「人を呼ぶ」という、普段は当たり前にできているコミュニケーションも、それが体力的に難しくなったとき、スムーズにコミュニケーションを取り続けられるかどうかで、その後のストレス量が大きく変わると感じました。介護する側もされる側も、できる限り穏やかに日々を過ごせるような工夫が必要だと思います。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:大木玲/40代女性・主婦。
イラスト:やましたともこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています
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