今回は、前回の続きからもう少し具体的な自己肯定感の高め方を見ていきます。
自己肯定感を持つというのは、子育ての一要素というよりも子どもの心の成長の核そのものと言ってもいいのではと僕は思っています。
幼少期の子どもにもっとも大事なことがあります。
それは、「無条件の肯定」をたくさんもらえることです。
「条件付きの肯定」と「無条件の肯定」
肯定とひとくちに言っても、実は条件付きの肯定と無条件の肯定があります。
前回、「褒める」ことに気をつける必要があると指摘したのは、「褒める」はこの条件付きの肯定になりがちだからです。(例外は、子ども自身がそのことに達成感、満足感、喜びを感じており、かつ大人の方も感情からそれによる喜びを感じているときに出てくる褒める関わりです。)
幼少期の子どもに必要なのは、無条件の肯定です。
前回のコラムで「肯定をプレゼントする」と意味深な言葉を使っているのは、肯定は対価にするよりも、無償のものである方がいいからです。何かができたときのご褒美としてあるわけでも、なにかをさせるための報酬としてあるわけでもなく、なにも見返りを求めないプレゼントとして肯定を子どもに届けていきます。
では、無条件の肯定ってなんでしょう?
これは、言い換えると存在の肯定ということです。
存在の肯定になる言葉がけ
第1回目のコラムで、子育ての最初の目的は「できる子」を目指すのではなく、「かわいい子」を目指しましょうというお話をしました。かわいい子にするためにはかわいがればいいともお伝えしています。
「あなたはかわいいね」
「あなたのこと大好きよ」
「あなたがいてくれて私はうれしいわ」
「あなたと一緒にいると楽しいよ」
「今日も元気でいてくれてよかった」
子どもをかわいがっている言葉です。別に、なにも褒めていませんよね。これらはみな存在の肯定になっています。
また、おむつを替えや沐浴のあとの「きれいになってさっぱりしたね」「セッケンのいい匂いがするね」などの言葉も共感とあいまった存在肯定の言葉になっています。
赤ちゃんだからわからない?
年齢が小さい子は、確かに細かな言葉の意味というレベルでは理解していないところもあるでしょう。しかし、そこに含まれる大人の感情のあり方や、それが肯定のメッセージであることなど、言葉の裏にあるものは明確に感じ取っています。
ですから、相手が0歳の赤ちゃんであったとしても、わからないなどと思う必要はありません。肯定の言葉をかけてみて下さい。こういった存在の肯定=無条件の肯定は、○○ができたから褒めるといった関わりよりももっと子どもの心の根っこに働きかけてくれますよ。
「先取り」が自己肯定感向上の邪魔をする!?
「先々○○の能力が必要だから、今のうちから○○させておかなければ」
子育てする人は、ついこの思考にとらわれてしまいます。
例えば、
「人見知りするようになったらいけないから、今のうちから慣らしておかなければ」
「幼稚園に来年入るので、今のうちから友達とうまく遊べるようにしておかなければ」
この考え方で子育てをすると、それをしてすんなりうまくいく子であれば問題ないかもしれません。しかし、それがうまくいかない我が子に直面した場合、親の気持ちはどのようになるでしょうか?
親の気持ち、ふたつの否定
これは、人の心のクセというもので、一旦「○○をできるようにしなければ」と思ってしまうと、そこに当てはまらない子を見たとき、どうしても否定的にとらえてしまう気持ちを抑えられなくなります。
「○○できるべきなのに、我が子はまだそれができないわ」
このような親の気持ちには、ふたつの否定が隠れています。
・子どもの姿に対する落胆や心配という形での、子どもの現状の姿への否定。
・それを達成させられない自分を責める気持ちという自分への否定。
このどちらもがたくさんになると、子育てそのものや子どもに向き合うこと自体がしんどくなってしまいます。
先取りは子どもに「できない経験」「失敗の経験」を増やす
小さい子を育てるときは、単に早くに練習し始めれば早くにできるようになるというのは少し早とちりな理解です。なぜなら、発達段階というものがあるからです。
子どもがその発達段階に到達していないときに、その能力を獲得させようとしてもそれはたいていの場合うまくいきません。
・友達とうまく遊ぶためには、社会性の発達という内面の成長が必要
・お箸を適切に使うためには、手指の機能の発達が必要
・おむつが取れるためには、身体的な発達と、自立心といった内面の発達両方が必要
先取りで子育てを考えても、子ども自身に「○○を要求されているのにできない経験」を繰り返させ、ものごとへの意欲を無駄に費やしてしまったり、うまくできないという失敗の経験ばかりを増やしてしまったりします。また同時に、親が肯定的に自分を見てくれないということも重ねさせてしまいます。
これらは、自己肯定感を向上させることにはつながらないですよね。
ですから、自己肯定感を高く維持していこうと思ったら、先取りにとらわれないよう少し自分自身の心の中の「○○できること」を求めるハードルを下げておくといいでしょう。
ネガティブと見える姿を親が受け流す
子どもの成長に大切なのは、その子どもの成長段階にあったことを存分に親が楽しむことです。
例えば、1歳になったばかりの子が、人見知りをして親にくっついてばかりというのは、少しもおかしいことではありません。子どもの個性によっては、もっと大きな年齢でも人見知りをすることもあるでしょう。その子の発達の姿として、「人見知り」が出ているのであれば、思う存分人見知りをすればいいのです。
子どものあるがままの姿をとらえる
「ああ、人見知りしているのね~。そうか~、今はそういう姿なんだ。がんばれ~」
親の方が屈託なくそのように見ていれば、子どもはそのとき楽しめることをしながら、後は自然とその子自身の力でその段階を乗り越えていきます。
「あら、そういえば最近人見知りしなくなったわね~。そうか~、もうそういうところまで成長したのね~」と子どものあるがままの姿をとらえていくことの積み重ね。
この親のアプローチが、子どもの根っこにある自己肯定感を作っていきます。ひとつひとつの行動のできる、できないに振り回されなくていいのです。
これが、子どもの本当の自己肯定感を高めていく上で大切なことではないかと思います。
まとめ
先に述べた人見知りへの対応には、自己肯定感を高めるプロセスだけでなく、他にもいろいろな子育てのエッセンスが隠れています。このことも子どもが小さいうちに知っておくと、子育てをラクにしてくれるポイントになります。次回はそれを見てみましょう。