妊娠によって、からだのさまざまな部分に変化が起こりますが、胸が張ったり、いつも着けている下着がきつくなったり、痛痒い感じがするなど、妊娠前とは異なる症状が起こります。ここでは、妊娠中の胸の変化や対処法についてお話ししたいと思います。
妊娠すると胸が張る原因とは?
妊娠による胸の変化で最も多いのが、胸の張りです。ある研究では、妊娠初期に43%の人が胸の張りを感じていたという調査結果が出ています(※1)。この胸の張りは、妊娠することによって分泌される女性ホルモンが、大きく変動することが原因とされています。
エストロゲンとプロゲステロン、この2つの女性ホルモンは、胸の張りに大きく関係しています。エストロゲンは乳管(乳汁が通る道)を増殖させる働きがあり、プロゲステロンは腺房(乳汁を分泌する部分)を増殖させる働きがあります。これは産後の授乳に向けて、妊娠中から母乳を作る準備をするために起こる変化です。この変化によって乳腺が発達し、乳房のサイズや重さが増していきます。正常な妊娠の経過の1つですので、心配いりません。
※1『佐久大学看護研究雑誌 8巻1号(妊娠初期のマイナートラブルによる妊婦の日常生活上の苦労・困難さに関する実態調査)』(佐久大学看護学部)
張り以外の胸の変化
胸の張り以外に、下記のような変化が起こる場合があります。
◾️乳頭の感覚が過敏になる
乳頭が敏感になり、服が当たったり擦れるだけで違和感や痛みを感じる場合があります。また、かゆみとして感じられる場合もあります。
◾️乳汁分泌
妊娠中期から後期になると、母乳が作られるようになります。そのため、乳頭マッサージの際など、乳頭を刺激することで薄く母乳が滲むことがあります。産後の授乳に向けて、準備が進んでいることがわかります。
◾️乳頭・乳輪が色づく
乳頭・乳輪が濃い色味に変化し、黒っぽくなる場合が多いです。色の変化に伴い、乳輪が大きくなる場合もあります。
妊娠中の胸の張りの対処法
妊娠をすると血行が盛んになり、乳腺も発達していきます。そのため、妊娠2カ月頃から胸の形と重さが変化していきます。胸の下半分から脇へと大きくなっていき、重さも増していくため、同じカップサイズでも妊娠前とは形や容量が大きく違ってきます。今までのブラジャーのままでは、妊娠中の変化に対応できず、胸を圧迫し、胸の張りを増強することになってしまいます。胸の圧迫感がある、脇側のワイヤーに違和感を感じる、アンダーが苦しく、気持ち悪さを感じることに1つでも当てはまる場合は、今のブラジャーが合っていない可能性が高いので、買い替えを検討しましょう。
マタニティ用のブラジャーは、ゆったりとしたサイズやデザインのものを選び、圧迫しないように気をつけましょう。妊娠中の胸のボリュームの変化は急激で、妊娠5カ月ごろには1カップ程度、妊娠10カ月ごろには2カップ程度サイズが上がります。2回以上買い換えることも考えられますので、枚数を多く揃えるのは妊娠後期になってからがおすすめです。
胸の張りなど妊娠中のマイナートラブルの軽減には、適度な運動と規則的な睡眠習慣が効果的ですので、ウォーキングやストレッチ、ヨガなどを生活に取り入れたり、早寝早起きの習慣をつけるのがおすすめです。ただし、切迫徴候のある方や安静の指示がで出ている方は、運動は控えておきましょう。
まとめ
妊娠をすると、ホルモンの変化によって、つわりや胸の張り、イライラしやすいなど、さまざまなマイナートラブルが起こります。これらの症状は正常な妊娠の経過ですので、上記の対処法を試しつつ、時期が過ぎるのを待ちましょう。胸の張り以外に、白や透明以外の分泌物(緑や茶色など)がみられる、乳房の皮膚がくぼむ、腫れる、赤くなる、しこりを触れる、ただれるなどの異常が見られる場合には病院を受診するようにしましょう。
参考:
・『佐久大学看護研究雑誌 8巻1号(妊娠初期のマイナートラブルによる妊婦の日常生活上の苦労・困難さに関する実態調査)』(佐久大学看護学部)
・ワコール「からだの変化とマタニティインナー選び」
・MSDマニュアル「乳頭からの分泌物」