東京都平成31年度予算案が発表されました。その中で一番のTOPICSと言えば、『結婚から出産、子育てまでの切れ目ない支援』として390億円計上されたことです。
出典:広報東京都平成31年3月号 P4 (http://www.koho.metro.tokyo.jp/2019/03/documents/201903.pdf)
今回拡充されたのは、この2点です。
(1)不妊検査等の助成対象 【妻の年齢35歳未満から40歳未満に拡大】
不妊検査等の助成について、年齢制限が緩和されます。
今までは妻の年齢が35歳未満の夫婦(事実婚を含む)に対して助成対象とされていましたが、平成31年度から40歳未満へ拡大されます。
(2)不妊治療費助成対象 【夫婦合算の所得制限730万円(国基準)から905万円に拡大】
不妊治療費助成対象は「夫婦合算の所得制限730万円」が条件でした。これが平成31年度から、所得制限の上限905万円まで拡大されます。
企業で働く人が1年を通じて勤務した給与所得者の年間平均給与は432万円※1ですから、730万円から905万円に拡大されることで、今まで対象外だったカップルも助成の対象になるケースが増えてきます。
不妊治療は体外受精や顕微授精など高度生殖医療技術の場合、一周期あたりの治療費が50万円を超えるケースも多く、所得制限で助成金を利用できない層であっても金銭的な負担はとても大きいのです。
NPO法人Fine(ファイン)が実施した【不妊治療と経済的負担に関するアンケート2018※2】の結果速報によると、『国が実施している「不妊に悩む方への特定治療支援事業」による助成金を申請したことがありますか?』の問いに、「ある」と答えた人は 42%、「ない」と答えた人は 58%(1,497人中867人)でした。
出典:「不妊治療と経済的負担に関するアンケート 2018」http://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_Keizaiteki_anketo2018.pdf
なんと、6 割近くの人が不妊治療に対する助成を受けられていません。助成金の申請をしていない理由として、約40%の人が「所得制限を超えるから」という理由でした。つまり全体で治療をしている患者の約4人に1人は「所得制限のために助成を受けられていない」状況が明らかになりました。
出典:「不妊治療と経済的負担に関するアンケート 2018」http://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_Keizaiteki_anketo2018.pdf
また、アンケートの自由記述欄には、「所得制限は無くしてほしい。昨年は制限を数千円ギリギリオーバーして、申請できませんでした」、「給料だけでは賄えず、貯金を切り崩している。所得制限をぎりぎり超えてしまっているので、助成を受けることができず不公平感を感じている」といったコメントがありました。
子どもを望む人が、自分たちらしい選択ができる環境。そして子どもを安心して産み・育てられる環境を整備することは、女性だけに向けられたサービスではなく、男性にとっても自身の人生設計を考える上で大きなテーマとなるでしょう。
今回の東京都の取り組みは、他の自治体関係者からたいへん注目されています。東京都の事例をきっかけに、今後全国の各自治体で独自の不妊や不妊治療に関わる制度・サポートが拡充していく動きにつながっていくと嬉しいです。
参考:
※1 平成29年度:平成29年分民間給与実態統計調査結果について(国税庁) https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/minkan/index.htmより。正規非正規男女合計の数字。なお、正規494万円、非正規175万円)
※2 「不妊治療と経済的負担に関するアンケート 2018」(2018年9月18日~2019年1月31日実施/WEBアンケート。自由回答を含む約 60 問/1,576人(うち不妊治療の経験がある人1,497人の回答)
http://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_Keizaiteki_anketo2018.pdf